コラム

シニカルなイギリス風ユーモアでスターマー英首相を斬ると...

2024年11月09日(土)15時03分

スターマーの妻は数々の国家行事に出席することになるので、きちんとした服装をする必要がある。彼女がプライマーク(イギリスで人気のファストファッションブランド)などを着ていたら、イギリスにとっては恥ずべき事態だろう。

さらに、高級なドレスを1枚買って今後4年間とことん着倒すこともできない。さりとて年に数回、1000ポンドの買い物がまるで大したものではないかのように支払えるだけの高額な給与が首相に支払われているわけではない。

イギリスには、首相夫人が服を買うために国庫を利用するようなシステムはない。だから、裕福な労働党支持者が出資してあげたとしても、おそらくそれほど悪いことではない。衣装提供を隠れ蓑にした巨額の「賄賂」などではないと、はっきり分かるような透明性さえあるのなら。

そして、イギリスにはそのためのガイドラインがあり、スターマーはそれに従ったと言っている。

でも、とにかく重要なのは、スターマーが「たちが悪く」見えてしまうのは、庶民がほしくても決して手に入らないようなものを山ほど無料でもらっているからだ。そして、あまりのがめつさにうんざりさせられた前保守党政権の面々と、なんら変わらないように見えるからだ。

ということで、こんなジョークを耳にする。「新しいボスに会ってみな。前のボスと同じさ」(これはザ・フーの楽曲「無法の世界(Won't Get Fooled Again)」の歌詞だ)

最後にお伝えしたいジョークは、「大衆」が考え出したものではない。コメディアンのソフィー・デューカーが書いたもので、スコットランドの芸術祭「エディンバラ・フリンジ・フェスティバル」の最高ジョークの1つに選ばれた。おもしろいことに、それほど笑える冗談ではないが、的を射ているようだ。今ではスターマーを見ると、どうしてもこのジョークを思い出さずにはいられないくらいだから。いわく、「キア・スターマーはAIが作成した代理教員の画像みたいに見える」

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プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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