- HOME
- コラム
- Edge of Europe
- サッカー女子W杯で大健闘のイングランドと、目に余る…
サッカー女子W杯で大健闘のイングランドと、目に余る「男子ならあり得ない」光景の数々
スペインに敗れ準優勝に終わったイングランド EURASIA SPORT IMAGES/GETTY IMAGES
<女子サッカーワールドカップで、準優勝したイングランド代表。女子サッカーの人気は高まり、発展を遂げたものの、まだ男子サッカーと比べるとあり得ないような扱いも残る>
8月20日に閉幕した女子サッカーワールドカップ(W杯)の最後に、奇妙な瞬間があった。準優勝したイングランドのゴールキーパー、メアリー・アープスがゴールデングローブ賞を受賞し、英BBCの解説者が、それでも彼女のレプリカユニフォームを買うことはできない、と今大会で何度目かの指摘をしたのだ。スポンサーのナイキは、大会中に商業的な理由からキーパーのユニフォームを発売しなかった(キーパー以外の選手のユニフォームは発売)。明らかに、男子サッカーならこれはあり得ないだろう。
イギリスでは今回、見ようと思えば女子W杯の試合は全て見られたが、ほとんどは「通常の」テレビ番組ではなくBBCやITV局のストリーミング配信。繰り返すが、男子サッカーならあり得ない。
今年初めには、女子サッカーリーグWSL(ウィメンズ・スーパーリーグ)の大失態をラジオで耳にした。チェルシーとリバプールの試合が、ピッチ凍結で危険な状態だからという理由で、開始6分で中止になったのだ。そんなコンディションは試合開始前から明らかだっただろうから、不信感が高まった。これはアマチュアじみていてプロらしくない。
そもそも、より深刻なのは、なぜ女子プロ選手は男子より劣ったピッチで試合しなければならないのかということ。例外はレスター・シティで、女子は男子と同じスタジアムを使える。ただし、男子とスケジュールがぶつからない範囲で。
多くのイングランド人中年男性がそうであるように僕も、サッカーイングランド代表が何らかの大会で優勝すること、そしてW杯で決勝に進むことを待ち望み、それに人生の全てを費やしてきた。今や、女子代表が過去12カ月でそのどちらもやり遂げたのだ(女子は昨年の欧州選手権〔ユーロ〕で優勝)。明らかな偉業だし、国中のメディアがライオネス(女子チームの通称)とサリーナ・ウィーグマン監督をたたえている。
女子サッカーは大きな前進を遂げてきたし、公平を期すために言えばイングランドサッカー協会は2020年から女子選手に男子と同額の報酬を支払っている(監督は対象外)。イングランド女子は男子と同じ世界クラスの施設、セントジョージズパークを練習に使うこともできる。これが可能になったことは、ある元女子選手に言わせればイングランド女子チーム発展の「鍵」になったという。それでも、まだまだ格差があることは明らかだ。
女子選手が男子の試合を解説すると反発を招く
陸上やテニスやホッケーなど他のスポーツには当てはまらないのだが、一般的に女子サッカーには格下扱いの雰囲気が残っている。女子サッカーは独自の長所を持つ個別の競技というより、男子サッカーの劣化版のような考えが潜んでいるようだ。
もちろん体格などに違いはあるが、女子サッカーの優れた点を数多く挙げられるのは僕だけではない。とりわけ、男子の試合で目立った問題になっているシミュレーション(ファウルを受けたことを装う行為)や審判などへの暴言がはるかに少ないのはいい。女子の試合はずっとスムーズに進行する。
シニカルなイギリス風ユーモアでスターマー英首相を斬ると... 2024.11.09
予算オーバー、目的地に届かず中断...イギリス高速鉄道計画が迷走中 2024.10.31
今までもらった最高のアドバイスって何? 2024.10.12
イギリスのスターマー新首相が早くも支持急落...その3つの理由 2024.10.08
日本人の知らないレンガ建築の底知れない魅力 2024.09.21
愛らしく哀れみ誘う......そんなロバの印象を一変させた恐怖体験 2024.09.03
世界最高レベルの住宅街を舞う大量のインコ 2024.08.31