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「白人で男性」イギリス建築界で活躍する日本人女性、大杉薫里の作品にのぞく和の精神
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建物より空間を重視したという大杉 ©JIM STEPHENSON
<環境を重視し、水の流れを考慮し、空間の意味を考える――英大手建築事務所でディレクターを務める大杉薫里は、手掛けたプロジェクトもその人柄も興味深い。本誌「世界が尊敬する日本人100人」特集に寄せて>
いつものとおり、僕は「世界が尊敬する日本人100人」の特集に楽しんで参加したが、いつものとおり、一人一人の興味深い個性にもっとスペースを割いて書けないことが残念だった。今回は、僕はロンドンの建築家、大杉薫里に会って取材する機会を得た。
僕はロックダウン中にBBCの番組で彼女を目にしていた(当時はテレビ漬けの毎日だった)。そのなかで彼女は、王立英国建築家協会のスターリング賞にノミネートされた、自身の建築を紹介していた。建築家の世界はイギリスでは「pale and male(白人で男性)」と言われる専門職分野の1つで、その業界でアジア人女性がこんなにも大手建築事務所(スタントン・ウィリアムズ社)でこんなにも要職(ディレクター)に就いていることに興味を抱いた。
さらに、彼女の英語がほぼネイティブ、という点も好奇心を引かれた。彼女は高校生の時にイングランドに渡ってきて、ボーディングスクールで学んだことも判明した。
テレビの前で、とても洗練されていて自信に満ちた態度だったのも印象的だったから、実はあのとき、どんなにドキドキしていたか、と僕に打ち明けてくれたのもまた面白かった。
テレビで紹介されていた、ノミネートされた建築プロジェクトは、ケンブリッジ大学の「主要職員」たちが暮らす街エディントンのものだった。それは単にアパートメントの建物群というより、学校やアートセンターを備えた新コミュニティーというしろものだ。大杉のチームは住居部分を担当していた。
単なるアパートでなく「共有住宅」
イギリスでは概して、ケンブリッジのような有望な場所では特に、手ごろな住宅が深刻なほど不足している。「主要職員」たち(教師、消防士、看護師など)はしばしば、彼らを必要としている地域では高すぎて住むことができない。そこでケンブリッジ大学は雇用主として、講師や研究者なども含む大学スタッフを住まわせるために、エディントンを建造した。
サステナビリティーや断熱性などで最先端の環境基準を追求した好例として、エディントンは注目を集めた。例えば建物は通常より金属の補強材の使用を減らしているし、断熱を強化している。「水減衰」というシステムの説明も興味深かった。雨水を単にタンクに貯めてトイレや庭の水やりに使うというだけではなく、(屋上緑化をスタート地点に)さまざまなシステムを通過することで、降水の勢いそのままに下水や排水路に水が流れ込まないように水流を緩やかにする仕組みだ。
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