コラム

「白人で男性」イギリス建築界で活躍する日本人女性、大杉薫里の作品にのぞく和の精神

2023年08月11日(金)09時00分


興味深いことに、建物そのものよりも「建物と建物の間の空間」のほうにより焦点が当てられていた(僕は龍安寺の枯山水を思い起こした)。要は、単なる264のアパート部屋というより、生き生きとして安心できる「共有住宅」の感覚を持てる地区を作り上げるということだ。

取材の最後に、大杉はハッとする一言を放った。自分の仕事は本当に興味深いものだと思う、と。当たり障りのない言葉かもしれないが、多くの場合、人は取材の最後の最後になって記者に伝えたい1つのことを言うもの。大杉の場合、建築家としての長年の挑戦とこのレベルに達するまでの困難な道のりを語ってきた後に彼女が言いたかったのは、つまり彼女が今も変わらず建築の仕事を愛しているということ。僕はこれに、ちょっとした刺激を受けた。

大杉薫里
Kaori Ohsugi
●建築家

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プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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