コラム

新国王も容赦なくからかうイギリス人は、皇室に対する畏敬の念に満ちた日本人と違って不敬か?

2023年05月08日(月)14時15分
チャールズ国王夫妻

3月のチャールズ国王夫妻のコルチェスター訪問も、お祝いムードに満ちていた HENRY NICHOLLS-REUTERS

<僕の地元を3月、チャールズ国王夫妻が訪問するという一大イベントが。危うく見逃すところだった僕が、お祝いムードに沸く人波で感じたこと>

3月に、当時はあまりに気まずくて書けなかったのだが、僕の住む「市」でかなり刺激的な出来事があった。英チャールズ国王とカミラ王妃が訪れたのだ。

これまでブログで書くのに気が引けたのは、僕がもう少しでこの一大事を寝過ごしてしまうところだったから。僕はその日までいくつかやることに追われていて、「明日」は休むぞと決めていたから、わが国の新国王夫妻が僕の家のほんの軒先を訪問していたのを完全に気付かずにいた。

実のところ僕はジャーナリストとして、起こっていた出来事を知らなかったというほうが、起こったことを寝過ごしてしまうよりもたちが悪いと思っている。寝過ごしてしまうのは、疲れていたり体調が悪かったりすれば誰にでもあり得ることだ。でも前者は、基本的なプロフェッショナルとしてのスキルが欠如している。

ばかげているのは、僕が前夜に繁華街を歩いていて、道のそこかしこに数々の国旗をつるす作業員の姿を見かけていたこと――そして、僕は立ち止まって理由を尋ねることすらしなかったが、これは僕の直感に反している。あのとき僕は気分がすぐれなかったというのが「言い訳」だが、実際は、怠慢にも「戴冠式の準備に違いない」と考えただけだった(まだ戴冠式まで数カ月あったのに)。

僕がジャーナリストになったのはまさに、歩く道すがら「何が起こっているのか? 何をしているのか? どうしてそうなるのか?」と誰もかれもに聞いて回るタイプの人になりたかったから。僕は知る必要があるし、聞いてみた結果、楽しめたり興味深い状況だったりする時もあれば、心底気まずい思いをする時もある。

たとえば3月には、2人のカメラマンが、雨の降りしきる浜辺で若い女の子にあれこれポーズを取らせ、彼女の持っていた素敵なコートを着せることもなく何枚も写真を撮っているところに首を突っ込んでみた。すると確かにこれは写真撮影だったが、言うなれば屋内だったらさらに女の子が服を脱ぐようなたぐいの撮影だった......。

皇族を出迎える日本人と徹底的に違うのは......

だが、話を国王夫妻訪問に戻そう。チャールズとカミラは、僕の町が最近、市に格上げされたというめでたい事態ゆえに訪問した。幸運にも僕は、目が覚めて彼らが目と鼻の先の道を通ることをニュースサイトで知り、なんとか彼らが大きな窓のある大きな車で通り過ぎるところを追いかけるのに間に合った。

だから、報道の基準から見ればかなり弱いけれど、僕は国王夫妻を「一瞬目にした」。それは大抵の一般人が王室メンバーを前に経験するもので、つまりは一目見て手を振った、ということだ。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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