- HOME
- コラム
- Edge of Europe
- 「コロナ後」ロンドンで(細かすぎる)再発見
「コロナ後」ロンドンで(細かすぎる)再発見
5年の歳月をかけて、ビッグ・ベンの改修はほぼ終了した。足場は外され、ピカピカになって――見慣れたものとは違う配色になっている。いくぶん白っぽくて光沢感が増している。片側についた時計はちょうど12時を指しており、僕は一瞬混乱した。
ここ数週間で観光客が再びロンドンになだれ込むようになってきたから、改修が済んだのはグッドタイミングだ。まるでパンデミックはすっかり終了したか、あるいは人々が終了したかのように振る舞っているように見える。
知ったかぶって言うと、ビッグ・ベンという名称は実際には、有名な塔の内部にある鐘のことを指す。塔そのものは、2012年にエリザベス女王のダイヤモンド・ジュビリー(在位60年)を祝してエリザベス・タワーと再命名された。それ以前は「セント・スティーブンス・タワー」だったのだが、そう呼ぶ人はほぼいなかった。ビッグ・ベンとしてあまりに有名だったから、他の呼び方をするのはばかげていたのだ。
そんなわけでビッグ・ベンは、観光客が写真を撮りたがるイギリスのランドマークだ。そしてベストスポットの1つは、傍らに立つ昔ながらの赤い電話ボックスの横から撮ること。公衆電話は明白な理由によってイギリス中から姿を消しつつあるが、ここには隣り合わせで2つが残っている(建築家ギルバート・スコットの古典的デザインだ)。観光客たちは、ビッグ・ベンを背景にしてこの電話ボックスの横に立つ。これ以上にイギリスらしい風景があるだろうか?
いや、さらに「よりイギリス的」なのは、観光客グループがこの電話ボックスの順番待ちで整然と列を作っている様子だ。もちろん、電話をするためではなくて写真を撮るため。イギリス人はきちんと行列を作る名人だとはよく言われていて、「外国人」はこの文明をそれほど極めていない、と僕たちは考えがちだ。きっと彼らはぐちゃぐちゃに押し合いへし合いして写真を取り合うものだとばかり思っていた。ところが、そのイギリスのランドマークと写真スポットの前には、完璧で、礼儀正しく、辛抱強い、「イギリス的」な列ができていた。おかげで僕はなんだか幸せな気分を味わえた。

アマゾンに飛びます
2025年4月22日号(4月15日発売)は「トランプショック」特集。関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ使い回しをやめるまで 2025.04.05
お手軽スポーツ賭博がイギリスを蝕む 2025.04.02
もうアメリカにタダ乗りできない...トランプ2期目でさすがに欧州が目を覚ました 2025.03.19
イギリス流のトランプ操縦術が始動 2025.03.05
移民の多い欧州の国々で増え続けるテロ事件...「防止」組織はテロを止められるのか 2025.03.01
政治改革を「いかにもそれやらなそう」な政党がやるとどうなるか 2025.02.15
「嫌な奴」イーロン・マスクがイギリスを救ったかも 2025.02.07