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「イギリス人は階級が9割」......じゃない!
僕は本気でニールのことを心配している。トニーのような情熱がほしい。チャールズにはがっかりさせられる。ニックの成功は感心するけれど、いちばん喜べるのはポールのことだ。ジョンは思っていた以上に好きになったけど、ブルースにはイライラする。もっとも、ブルースだって10年前に会っていたら誰より気に入ったかもしれない。なぜだかわからないけど、「女の子たち」にはあんまり感情移入しない。とりわけスージーには。
何のことか説明しなければ。僕はいま、10年以上気になりながらずっとできずにいたことを実行している真っ最中。『UP』というドキュメンタリーシリーズをぶっ続けで見ているのだ。僕的にはこれはおそらく、史上最高傑作のドキュメンタリー番組の1つ。14人のイギリス人の人生を、何十年もかけて追ったシリーズだ。
初放送は1964年。主演者全員が7歳だった。以来、7年ごとに『7UP』『14UP』というタイトルで彼らのその後を追跡している。直近の『56UP』は2年前にテレビで放送されていたが、いつかシリーズを最初から順番どおりに見たかったので、見ないでおいた。
冒頭で名前を挙げたメンバーは、僕にとってすっかり身近な存在になった。奇妙で一方的な気持ちなのは分かっているけれど、本当の友達のように感じている。人間嫌い気味の性格を自覚している僕だけに、彼らみんなを好きになったことには、自分でも驚いている。たぶん、初めて彼らに「会った」のが7歳の時点だからだろう。相手が7歳の子供だったら、誰しも応援せずにいられないだろうし、その人生が成功するよう祈らずにはいられないものだ。
人が劇的に「成長」していくのを、ほんの数週間のうちに見守るというのは、驚くべき体験だ。7歳が14歳になり、21歳、28歳になるのを、僕は10日間で目撃した。35歳に行く前には一休みした。ちょっと繰り返しが多くなってきたからだ(制作側は7年前や14年前の様子を視聴者に「思い出させる」必要があるし、番組を見たことがない人のことも考えないとならない)。
僕は今のところ『42UP』を見るのをしばらく我慢しているが、自分の今の年齢に近い彼らがどうなっているのか知りたくてたまらない。
初回の『7UP』に出演した「子供たち」の人選には明らかに、イギリス社会の階級格差を示す狙いがあった。ロンドンのイーストエンド出身の少年(トニー)と、ロンドンの公立校に通う少女3人(つねに「ジャッキーとその友達」として紹介される)は、労働者階級。一方で上流階級には、ロンドンの同じ私立小学校に通う3人の少年(ジョン、チャールズ、アンドルー)がいる。さらに、施設で育つ少年2人(後に父親に再会してオーストラリアに移住したポールと、ハーフの婚外子で母親が精神疾患を抱えているサイモン)もいる。
ニールとジョンは中産階級の代表として選ばれたと思うけれど、リバプール出身なのでむしろ「下流中産階級」に見える(後にリバプールは「衰退した都市」の同義語になっている)。イングランド北部の過疎地域の農家で育ったニックは、典型的な「カントリーボーイ」だ。
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