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EU・インド急接近で変わる多極世界の地政学...「新スパイスの道」構想は前進するか
ここでEUの立ち位置である。「もし我々が賢明であれば、これを有利に利用することができます」とEUの外交官はユーラクティブの取材に対して説明したという。
このような状況は「インドと欧州が、中国に関して共通の利害をもたないことを意味しない」と、政治学者のクリストフ・ジャフレロは『ル・モンド』への寄稿文で主張している。両者とも、中国からの解放、中国から逃れ保護を望むという、共通の願いを持っているので、より高度な強力関係につながる可能性があるという。
インドは「第三の道」として知られる欧州の政策を高く評価しているのだという。中国とアメリカのどちらかを選びたくない国々(東南アジア諸国も同様)に、代替案を提供しているからだと説明している。
原油は問題の焦点にせず
次に、ウクライナとロシア問題。欧州にとっては最大の問題と言える。
印露の緊密な関係はEUをいら立たせてきた。この件をEUはどうするつもりか。
モディ首相は、2024年には二度もロシアを訪問している。今年はプーチン大統領がインドを訪問する予定だ。インドは今までウクライナ侵攻を非難せず、国際的な制裁にも参加していない。
インドは軍事面をロシアに依存しているので、反対できないと説明してきた。過去20年にわたり、ロシアの機器はインドの軍事購入の約65%を占めてきた。
EUの側では、長期的には、これらの購入品を欧州製に置き換えることが可能だと考えている。例えばフランスは最近、インドと戦闘機数10億ドル規模の契約を締結した。
原油の問題もある。
インドはロシア産原油を輸入しており、ディーゼルやガソリンに加工して、世界市場に供給している。インドの精油所が、ロシアの原油価格の下落から利益を得ていることも、EUをいら立たせてきた。
しかし、EU側は制裁に関しては問題提起をしても、原油に関しては問題の焦点にしないようだ。
ある別のEU外交官は、「原油を買うインドを非難するのはやめるべきです。精製されたプロダクトは、欧州のバイヤー向けだからです。むしろロシアへのハイテク輸出を問題にするべきです」と述べたという。
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