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タリバン、国際資金枯渇の危機:米ドルで三重苦 アフガニスタンの財源は?
米メディアによると、米財務省が停止を働きかけていたという。米議会でテロリストを支援したタリバンへの反発が根強く、多数の議員が支援停止をイエレン財務長官に求める連名書簡を送っていた、との報道がある。
止まるかもしれない国際援助
三つ目は、国際援助である。
前述したように、国際援助は、同国の国内総生産の42%を占めている。
これは停止はしているが、まだ中止と決まったわけではない。援助している欧米諸国の立場は、曖昧になっている。今年4億3000万ユーロ(約553億円)を支払う予定だったドイツは、援助の停止を発表した。
どのみち、タリバンにとっては、枯渇しそうな大きな資金源である。
シンクタンク、Chatham Houseのアナリスト、ファルザナ・シェイク氏は「国際援助は、国際社会がタリバンに対抗できる最後の手段です」と言う。このお金が、タリバンの強要を制限しようとする圧力の手段になるのは、明らかである。
アメリカのブリンケン国務長官は、8月15日(日)に早くも「アフガニスタン国民の基本的な権利を尊重しなかったり、再びテロリストの支援や受け入れをするようになったら、制裁は解除されず、(タリバンは)渡航することができなくなるだろう」と述べた。
では、国家の財源はあるのか
それでは、新しい政権を担うタリバンが、独自に入手できる国家の財源はあるのだろうか。
まずは、国民からとる税金である。
アフガニスタンには、収穫物の10分の1の税である「oshr」というものが、何世紀も前からある。
また、可処分所得の2.5%が、宗教税である「zakat」として、貧しい人々のために徴収される。ただ、徴収は低迷したままであることが多い。
次に、資源への課税である。
『フィナンシャル・タイムズ』の報道によると、違法な採掘や輸入燃料への課税も、資金源となっている。Alcis consultancyの調査によると、イランから輸入した燃料に対するタリバンの収入は、昨年は3000万ドル(約33億円)にも上った。
加えて、ロンドンのシンクタンク・ODIの調査によると、パキスタンとイランの国境に接する南西部のニムローズ州では、自動車やタバコなどの輸送物資に対する課税が、タリバンの収入の80%を占めている。
そして、麻薬の取引である。
2001年の米国主導の侵攻以降、麻薬対策に約90億ドル(約9900億円)が投入されたにもかかわらず、依然としてアフガニスタンは世界最大のアヘン生産国である。
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