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なぜEUは中国に厳しくなったのか【前編】米マグニツキー法とロシアとの関係
ボレル外相は、「EUグローバル人権制裁制度の確立は、世界各地での深刻な人権侵害・人権乱用に対応するための自身の役割を強化するとのEUの決意を強調する、画期的な取り組みだ」、「誰もが有効な人権を享受することを実現することは、EUの戦略的目標である」と声明を発表した。
そして前述したように、3月2日初めてこの法律を使った制裁が課されたが、対象はロシアだった。4人のプーチン大統領の側近らに課されたものだった。
次から次へと制裁。キーパーソンはボレル外相
勢いづいたかのように、EUは3月22日には、新疆ウイグル地区の幹部ら中国当局者4人と、1団体を制裁対象とした。
それだけではない。北朝鮮の弾圧、リビアにおける超法規的殺人および強制失踪、ロシアのチェチェンにおけるLGBTIや政治的反対者に対する拷問および弾圧、南スーダンおよびエリトリアにおける拷問、超法規的・略式・恣意的処刑および殺害なども、同じ日に制裁の対象にしている。
中国からは、苛烈な反応がかえってきた。このような反応に対し、EU加盟国では、一層中国に反発を感じたり、とまどったり様々なのだが、その様子は後編に譲るとして、不動で常に毅然としているのが、ボレル外相なのである。
中国に対して──もちろん中国だけではないが──人権侵害を許さないという強い姿勢でEUがいま運営されているのは、ボレル外相に負うところが大変大きいと感じさせる。これは、EU組織内部の政治力学に関係していると筆者は見ている。
以前と比べて、EU内部で何が変わったのだろうか。 <後編に続く>
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
※筆者の記事はこちら。
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