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なぜトランプは根強く支持されるのか──歴史観と人種問題に見るバイデンとの対立
これには政治的な理由もあった。
トランプ氏がこの委員会を立ち上げたとき、氏は大統領選の世論調査でバイデン候補に遅れをとっていた。このプランを立ち上げることで、右派の支持者を活性化させようとしていたのだった。
オバマ氏が変えたアメリカ
果たして「奴隷制を維持するために、アメリカ独立戦争が起きた」という主張は、史実として、理由の一つにすぎないのであっても正しいのかどうか。
この点は、「1619年プロジェクト」を好意的に捉えた人の中からも批判が出ている。それは絶対に間違っている、史実に反すると言って。ニューヨーク・タイムズ社内でも大混乱を引き起こした。
しかし、良心的なアメリカ人は考える。確かに、白人入植者は自由のために戦った。輝かしい自由を手に入れた。独立を勝ち取った。しかし黒人は違った。彼らは鎖につながれて、強制的にアメリカに連れて来られた奴隷であった。これも紛れもない事実なのだと。
それに、「1619年プロジェクト」は、奴隷制や、アメリカの黒人の歴史や立場について、広範な論点を提示しているプロジェクトである。建国問題だけを扱っているわけではない。
しかし、このような大地殻変動が起きたのは、アメリカ人がバラク・オバマ氏を大統領に選んだからだ。他ならぬアメリカ人自身が選んだ大統領だ。
黒人であるにもかかわらず、彼が大統領に選ばれたのは、黒人奴隷の子孫ではなかったからだろう。
彼の父親はケニア人留学生で、白人の女性とハワイで出会って結婚、バラクが生まれた。優秀な父親はハーバード大学大学院を卒業、離婚して母国に単身帰国、官僚として国に奉仕したあと、息子が大統領になる前に亡くなった。
そして父親の出身国ケニアは、インド洋側(東)の国だ。大西洋側(西)の国々と異なり、一般に「黒人奴隷」のイメージをもたれていない。
そんなバラク・オバマだからこそ、アメリカ史上初の黒人大統領に選出されたのだろう。彼が起こした「奇跡」が、今アメリカを根本から揺さぶり、変革させようとしているのである。
トランプ大統領、離職2日前のレポート
このような巨大な歴史のうねりに対抗できる人物には、カリスマ性が必要だ。常識人でインテリではダメなのだ。
並外れた強さをもち、誰も真似できないエネルギーをもち、常識では考えられない言動さえもはばからない人物、それがドナルド・トランプなのだと思う。
トランプ政権があと2日で任期が終わるという、最後の最後である1月18日、トランプの「1776年委員会」はレポートを発表した。政権が民主党にうつることで、解散させられるのを予期していたのだろう。
内容はとりわけ、1960年代以降の進歩的な知識人によってつくられた「歪められた歴史」と呼ばれるものを糾弾している。
「人道的で自由な教育は、(60年代以降の)新しい教育によって、多くの場所で取って代わられてしまった。アメリカ人は、自分たちの本質、自分たちのアイデンティティ、自分たちの場所と時間から遠ざけられてしまった」と主張している。
委員会は、「本物の教育(authentic education)」を創ることを推奨している。アメリカ人が皆平等であることを教え、「国を愛する心」の育成を奨励すること、「ほぼ独占的に一次資料に頼ること」を含んでいるという。
「この国には、他の国と同じように不完全な部分があるが、歴史の年代記の中でアメリカは、最大の割合の自国民と、世界中の他の人々のために、個人の自由・安全・繁栄を、最大の度合いで達成してきた」と述べている。
最後の最後の時ではあったが、レポートとして形に残しておかなければならないという、同委員会の意志が感じられる。不十分ではあっても、トランプ政権中に発表されたことで、ホワイト・ハウスのアーカイブに残ることになる。
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