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睡眠不足で起訴も? 「24時間以上眠っていないと99%の精度で分かる血液検査キット」が開発された
運転に悪影響を及ぼさないとされる7時間睡眠をとったドライバーを基準とすれば、2~3時間の睡眠不足は飲酒リスクに匹敵する?(写真はイメージです) Maxim Artemchuk-Shutterstock
<アメリカでは自動車事故の約2割が居眠り運転に起因するという。今回血液検査キットを開発したクレア・アンダーソン教授は、睡眠時間5時間未満の運転の危険性を強調している。「血液検査で睡眠不足が認められれば、将来的には起訴も可能になる」と考える研究者も>
4月は、入学、進学、就職、転勤などで多くの人が新生活を始めます。環境の変化や新たな人間関係による緊張で、睡眠不足になりがちな時期です。
経済協力開発機構(OECD)の2021年版調査によると、日本人の平均睡眠時間は7時間22分で、対象となった33カ国中で最短でした。また、厚生労働省の国民健康・栄養調査(令和元年)によると、1日の平均睡眠時間が6時間未満の割合は、男性が37.5%、女性は40.6%でした。
事態を重く見た厚労省は、24年2月に「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を発表し、成人で6時間以上の睡眠時間の確保を目指して、良質な睡眠のための環境づくりや生活習慣などを提案しています。
睡眠不足は本人の健康を損なうおそれがあるだけでなく、認知機能の低下により、工場での作業や運転操作においてヒューマンエラーを起こす可能性が高まります。
たとえば世界の重大事故のうち、スリーマイル島原発事故(1979年)、米スペースシャトル「チャレンジャー号」爆発事故(86年)、チェルノブイリ原発事故(86年)は、作業員の睡眠不足による判断ミスが関与していると考えられています。また、米AAA交通安全基金(AAA Foundation for Traffic Safety)が2016年に公開した報告書によると、アメリカでは自動車事故のうち約20%が居眠り運転に起因すると言います。
けれどこれまでは、睡眠不足は本人の申告を根拠とすることが大半で、特に事故後に客観的に評価することは困難でした。
英バーミンガム大のクレア・アンダーソン教授らの研究チームは、24時間以上眠っていないことを99%の精度で検出する血液検査キットを開発したと発表しました。研究成果は「Science Advances」(3月8日付)に掲載されました。
血液検査は、睡眠不足によるヒューマンエラーを防ぐ救世主となりうるでしょうか。ドライバーへのアルコール検査のように威力を発揮し、事故を未然に防ぐ日は近いのでしょうか。開発の経緯とともに概観しましょう。
既存のツールとの違い
研究を主導したアンダーソン教授は、前職の豪モナシュ大・脳精神衛生研究所に所属している際、睡眠不足を評価する5つのバイオマーカーを発見しました。
バイオマーカーとは特定の病状や状態の指標となる項目や生体物質のことで、血圧や心拍数、ある病気の時に増えるタンパク質など、客観的に評価できるものです。
これまでも睡眠不足を検出するために、様々なツールが開発されてきました。その根拠となるのは、瞳孔の安定性(睡眠不足だと瞳孔の大きさがゆらぎやすい)やマイクロスリープの回数(睡眠不足だと超短時間の睡眠の回数が増える)でした。
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