コラム

「自己肯定感」の低い日本の若者を、どうやる気にさせるのか? 「自己効力感」に着目せよ

2019年10月29日(火)17時55分

実績という証拠の裏付けがないのが自己肯定感、あるのが自己効力感だ Sushiman/iStock.

<自己肯定感が低いために、仕事ができる自分を認めない若者もいる。そうした社員に必要なのは、口先だけの激励ではなく証拠に基づく説得だ>

日本の若者の「自己肯定感」が低い。内閣府の調査によると、アメリカやイギリスなど欧州の若者の80%以上、韓国の若者の70%以上が自己を肯定的にとらえているのに対し、自己肯定感が高い日本の若者は、わずか40%台にとどまっている。実に、半分にも満たないという。

意欲・やる気という項目が諸外国と比べて著しく低いことはわかっていた。しかし、自己肯定感がここまで低いとは驚きである。かなり残念な印象だ。

私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントである。だから、なぜそうなるのかを要因分析するつもりはない。クライアント企業から要求されるのは、そんな若者でも結果を出せるようにすることだ。

結果を出すことによって意欲が高まり、自己肯定感もアップすることはよくある。その手伝いをするのが我々コンサルタントの務めなのだ。

「自己肯定感」とは何か?

さて、ここまで取り上げてきた「自己肯定感」だが、そもそもこの言葉の意味を正しく捉えないと、高めたくても高めようがない。

「自己肯定感」とは読んで字のごとく、自分を肯定する感情だ。「自尊感情」とも呼ぶらしい。反意語は「自己否定感」。いろいろな自分を認め、ポジティブに捉えられる人を「自己肯定感が高い」と表現する。

似た言葉で「自己効力感」というのがある。違いがわかる人はいるだろうか。実は「自己肯定感」を高めるうえで大事な概念なので、ここでしっかりと押さえておきたい。

「自己効力感」とは何か?

「自己効力感」も読んで字のごとく、自分が行うことは効力があると信じられる感情のことだ。カナダ人心理学者アルバート・バンデューラが提唱した。

ビジネスで言えば、「自分はこの仕事を正しく遂行することができる」「自分はきっとこの目標を達成させることができる」と思えること。自己効力感が低ければ、「どうせ失敗する」「他の人はともかく、自分がやっても成果は出ない」と常に受け止めているだろう。

私が「自己肯定感」よりも「自己効力感」に着目するのは、事実をもって検証できるからだ。

自己を肯定できるかどうかは、その人の気持ち次第だ。性格にもよるところが大きいだろうし、置かれた環境によっても左右される。しかし、自分の力が効き目があったかどうかは、事実をもって立証できる。

「もっと自信を持て」

とだけ言っても、自己効力感が低い人は「私にはムリです」と言い返すかもしれない。しかし、

「もっと自信を持て。入社1年目の実績に対し、3年目の実績をこれほど伸ばしたのは過去に君しかいない。実に180%も成績がアップしている。伸びしろが大きい証拠だ。先輩社員を抜くのも時間の問題だよ」

プロフィール

横山信弘

アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長。現場に入り、目標を絶対達成させるコンサルタント。全国でネット中継するモンスター朝会「絶対達成社長の会」発起人。「横山信弘のメルマガ草創花伝」は3.5万人の企業経営者、管理者が購読する。『絶対達成マインドのつくり方』『営業目標を絶対達成する』『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者。著書はすべて、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。年間100回以上の講演、セミナーをこなす。ロジカルな技術、メソッドを激しく情熱的に伝えるセミナーパフォーマンスが最大の売り。最新刊は『自分を強くする』。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 6
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 7
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story