コラム

「働き方」を変えている場合か! 日本がこのまま「衰退途上国」にならないために

2019年12月09日(月)12時48分

一方的に要求するだけでは通らない MmeEmil-iStock.

<先進国のなかで日本経済の衰退が進んでいる。それは、必死に働いて成果も出さないうちに働き方の「改革」を考えているからではないのか?>

いくらなんでも、その表現はどうだろうか?

私は疑問を感じた。

日本が「衰退途上国」になるって......。

あなたは、「衰退途上国」という言葉を聞いたことがあるだろうか。

衰退の途上という下り坂を転げ落ちていくような表現は、目にするだけで妙な胸騒ぎがする。最近たまに報道で目にするワードだ。

私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントだ。今でこそ、このような仕事をしているが、25年以上前は、青年海外協力隊で「発展途上国」に赴任していた。

将来、発展が見込まれる国だったから、協力隊での活動中、現地で大いなる活力を日々感じた。働くことを喜びに感じる多くの若者とも触れ合った。

しかし何の因果か、支援してきた我々の国が「衰退途上国」になろうとしているとは。

世界第3位の経済大国という自負

たしかに、日本の「一人当たりの名目GDP」は世界26位。2000年に2位だった順位が、そのままズルズルと順位を落とし、たった18年で26位までランクダウンした。

ここ20年間の日本の経済成長率も極めて低い。先進国ではダントツ最下位。ここまでヒドイ数字を目の当りにしたら、たしかに衰退途上にあると言われても仕方がない。

私にこの言葉を教えてくれた経済評論家は、次のように言った。

「問題なのは、多くの日本人に自覚がないことだ」

『FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(日本語訳:日経BP)──という書籍が日本でもベストセラーとなり、多くの人が「感覚」「意見」よりも「データ」「事実」というファクトに関心を持つようになった。

しかし、ファクトを正面から受け止めず、感覚的にまだ日本が経済大国だという認識を、多くの人が持っているのが現実だ。

大企業の役員、中小企業の経営者たちと交流しているときに感じる。

日本は、世界第3位の経済大国だ、という自負を。

「名目GDPの国別ランキングでは、日本は、アメリカ合衆国、中国に次いで3位です。しかし、実力では凄まじい差があることは事実でしょう」

私が彼に言うと、

「日本のミライを信じたいなら、日経平均株価に連動した投資信託でも買えばいい。長期目線の世界の投資家が、どこにお金を出しているのか。そのファクトに目を向けるべきだ」

と返ってきた。

「日本は、働き方改革なんて、やってる場合じゃないんだよ」

彼は、そう強い口調で言い放った。

私は何も言わなかったが、心の中で「半分賛成で、半分反対だ」とつぶやいていた。

<参考記事>大阪府庁のPC強制シャットダウンは働き方改革ではない
<参考記事>正規・非正規の待遇格差をなくせば日本の働き方は変わる

プロフィール

横山信弘

アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長。現場に入り、目標を絶対達成させるコンサルタント。全国でネット中継するモンスター朝会「絶対達成社長の会」発起人。「横山信弘のメルマガ草創花伝」は3.5万人の企業経営者、管理者が購読する。『絶対達成マインドのつくり方』『営業目標を絶対達成する』『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者。著書はすべて、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。年間100回以上の講演、セミナーをこなす。ロジカルな技術、メソッドを激しく情熱的に伝えるセミナーパフォーマンスが最大の売り。最新刊は『自分を強くする』。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国副首相が米財務長官と会談、対中関税に懸念 対話

ビジネス

アングル:債券市場に安心感、QT減速観測と財務長官

ビジネス

米中古住宅販売、1月は4.9%減の408万戸 4カ

ワールド

米・ウクライナ、鉱物協定巡り協議継続か 米高官は署
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story