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マクロン新大統領の茨の道-ルペン落選は欧州ポピュリズムの「終わりの始まり」か?
こうした悩ましい選択の結果、フランス国民が選んだフランスの形は、マクロンが提示したリベラル(多文化主義、移民に寛容、弱者保護)で開かれたフランス(欧州統合推進、グローバル化、自由貿易・競争を重視)ということになった。しかし同時に、決選投票でマクロンに投票したフランス国民の中には、メランション支持者のように、グローバル化とEUに反対の人たちもいるし、フィヨン支持者のように、保守的で移民規制の強化を望む人たちもいる。そういう人たちのマクロンへの投票は、決して全権白紙委任というわけではない。また、そうした点で譲歩してマクロンに投票することをよしとしない(ルペンは嫌だが、マクロンも嫌だという)人たちは棄権に回ったと推定される。その数(棄権者数)は実に約1,204万人(全有権者の25.38%)にのぼる。これに加えて、白票がおよそ300万人(同6.34%)、無効票がおよそ106万人(同2.24%)も出た。
一方、ルペンに投票した人が約1,064万人(33.94%)も出たことは、保守的(フランス固有の文化や伝統・秩序を重んじ、移民に厳しい)で、閉ざされたフランス(グローバル化反対、保護主義、反EU)に固執するフランス人が、相当存在していることを示している。しかも、その数は、大統領選挙における国民戦線の候補の得票の伸び(下表)が示す通り、年を追うごとに増えてきており、今後も大きな勢力として強い影響力を持ち続けるということを示唆している。
こうして見てくると、マクロン新大統領にとっては、2回投票制のおかげで獲得した66%に見合うほどの国民の支持と委任を受けたわけでは決してないということが分かる。もともと、全有権者の中でいえば、第1回投票では18.19%、決選投票でも43.63%の支持しかなかったことも考え合わせると、マクロン新大統領の支持基盤は盤石とは言い難く、むしろ前途は茨の道だ。
マクロン新大統領の課題
従って、新大統領としての最大の課題は、リーダーシップをいかに確立できるかにある。そのためには、6月11日(第1回投票)と18日(第2回投票)に行われる国民議会選挙で、自身を支持する勢力(現時点では「さあ前進!」)が過半数の議席を獲得し、議会多数派となることが必要だ。フランスの大統領は、首相を任命し、二人三脚で政権運営をしていく仕組み(「半大統領制」とも呼ばれる)になっているが、首相は国民議会からの信任を得なければならないことから、議会での多数派を獲得することが不可欠なのだ。それに失敗すれば、マクロン大統領は就任早々、他の政党との連立(「コアビタシオン」と呼ばれる。元々は「同棲」という意味)を余儀なくされ、指導力を削がれることとなる。
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