ニュース速報
ワールド

焦点:米相互関税に政治リスク、中間選挙へ共和党に逆風も 経済への影響次第

2025年04月03日(木)18時03分

 4月3日、トランプ米大統領は各国からの輸入品に対して「相互関税」を課すと発表し、米国にとって「解放の日」になると訴えた。写真は2日、相互関税措置を発表し、MAGAの帽子に手を伸ばすトランプ氏。ホワイトハウスで撮影(2025年 ロイター/Carlos Barria)

Jeff Mason Andrea Shalal

[ワシントン 3日 ロイター] - トランプ米大統領は3日、各国からの輸入品に対して「相互関税」を課すと発表し、米国にとって「解放の日」になると訴えた。しかし、経済改革の公約が実現しなければ、共和党への逆風となり、有権者に経済的な苦痛を与える可能性がある。

専門家によれば、トランプ氏が関税によって達成できると主張する製造業の再活性化やサプライチェーンの再構築、生産拠点の国内回帰には数年を要する見込みだ。

その一方で、米国の同盟国は米製品に報復関税を課すとみられ、消費者は物価上昇に直面し、経済は下降局面に入る可能性がある。トランプ氏はこれを「一時的な混乱」に過ぎないと主張するが、来年の中間選挙を控え、有権者がこうした痛みを受け入れるかどうかは不透明だ。

共和党は関税政策により中間選挙で敗北し、連邦議会上下院の一方もしくは両方を失う可能性がある。

トランプ氏の1期目で広報部長を務めたマイク・ダブケ氏は、トランプ氏は困難な状況に対する耐性が高いとしながらも、中間選挙の結果次第では本当の困難に直面する可能性があると語る。「懸念されるのは、トランプ氏と側近らが期待する成果がいつ現れるかだ。中間選挙まで18カ月しかない」と指摘した。

ロイター/イプソスの世論調査によると、米国民の70%が関税引き上げにより食料品や消費財の価格が上昇すると予想している。この割合は共和党支持者でも62%に達する。

関税引き上げは利益よりも害をの方が大きいと答えた人は約53%、利益の方が大きいとの回答は31%だった。また、輸入品に関税を課すことで米国の労働者が利益を得るとの見方に同意したのは31%にとどまり、48%が同意しないと答えた。

フーバー研究所の研究員で、共和党の重鎮であるミット・ロムニー、マルコ・ルビオ両氏の顧問を務めたランヒー・チェン氏は関税について、「主要リスクは経済関連だ。まず物価に対する差し迫ったリスクがあり、それがインフレ対策を掲げて当選した大統領にとって何を意味するかだ」と指摘。もうひとつの問題がリセッション(景気後退)に陥る恐れだと述べた。

<選挙を巡るリスク>

共和党内ではトランプ氏に対する不満の兆候が見え始めている。

2日に行われた南部フロリダ州での連邦議会下院の2つの補欠選挙は、いずれも共和党候補が勝利したが、対立候補との得票率の差はトランプ氏が大統領選で勝利した時よりもはるかに小さかった。

また、大統領選の激戦州である中西部ウィスコンシン州の最高裁判事を選ぶ選挙は、トランプ氏や実業家イーロン・マスク氏が支持した保守派候補がリベラル派候補に破れた。

連邦議会上院はカナダに対する追加関税を撤廃する法案を可決した。共和党から4人が賛成に回った。

相互関税を発表を受け米株式先物は急落した。株価が幅広く下落すれば、確定拠出型年金401kで運用されている資産に打撃を与えることになる。

元共和党議員側近は「米企業と消費者のお金を解放してしまうのが『解放記念日』のようだ」と皮肉った。「航空母艦は急には止まれないし、世界経済を1日で作り変えることもできない」と話した。

トランプ氏はバイデン大統領から堅調な経済を引き継いだ。2024年の成長率は約3%、失業率は約4%、インフレ率は3%未満だった。

しかし、経済はほころびの兆しを見せている。トランプ氏が関税政策について言及し始めてから2カ月で、家計や企業の経済見通しに対する信頼感は下降傾向にある。昨年11月の大統領選後に見られた楽観的な状況とは様変わりしており、政治リスクが高まるとの見方がでている。

一方で、トランプ氏はこれまでも有権者の間で大きな不安を引き起こしてきたが深刻な事態に陥ることはなかった、と指摘するのはグリネル大学(アイオワ州)の政治学教授バーバラ・トリッシュ氏。「今度こそ最後の一撃となり(どんな批判も跳ね返す)テフロンが傷つくと言われたことが何度もあった。しかし現実はそうならなかった」と述べた。

中小企業経営者の関税に対する評価は分かれる。

マーリン・スチール(ボルチモア)のオーナー、ドリュー・グリーンブラット氏は、顧客が米国製品にシフトしており、トランプ氏の関税はすでに受注増に貢献していると語った。

一方、品ぞろえの3分の2を欧州産ワインが占めるワシントンのワインショップ「DCanter」のオーナー、ミシェル・リム・ワーナー氏は「本来25ドルのワインに75ドルも払う人がいるだろうか」と先行きに懸念を示した。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国憲法裁、尹大統領の罷免決定 直ちに失職

ビジネス

午前の日経平均は大幅続落、昨年8月以来の3万400

ビジネス

シャープ、堺工場の一部をKDDIに売却 100億円

ワールド

スイスへの米関税は理解不能、対策でEUと連携=財務
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描かれていた?
  • 2
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡眠の「正しい関係」【最新研究】
  • 3
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 4
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    得意げに発表した相互関税はトランプのオウンゴール…
  • 7
    「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル…
  • 8
    アメリカから言論の自由が消える...トランプ「思想狩…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 10
    テスラが陥った深刻な販売不振...積極プロモも空振り…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中