最新ポートランド• オレゴン通信──現地が語るSDGsと多様性
【現地レポート】世界最大の 『Coffee EXPO』in ポートランド~全米チャンピオンからのアドバイス
2023年4月21日から23日にわたり、 世界最大のコーヒー見本市「スペシャルティコーヒーEXPO」(第34回) が開催されました。
コーヒーの町として名をはせるポートランド。その地での初開催ということで、参加者は約12,000人。人々とコーヒーの熱気で、会場ドアからすでにアロマがあふれています。
会場内に一歩踏み入れると、そこはコーヒー王国という世界。出店企業は76カ国から約580社。豆の生産ブランド国は30にもおよびました。
世界中から、豆生産者、自家焙煎ブランド、最新技術や革新的な新製品メーカーのブースが並べられ。別のホール会場では、周り切れない程のワークショップ、持続可能なコーヒー豆の売買プログラムなどの学習プログラムも目白押し。
そして何よりも、世界中の人々の注目を集めているのが『全米コーヒー選手権』決勝です。予選を勝ち抜いてきた選りすぐりのバリスタ、ロースターが、緊張と共にパフォーマンスやプレゼンをする姿。それはまるで、舞台ショーを見ているような感覚におちいります。
今回、展示会場全体で感じた空気感。それは、コロナ禍で沈滞していた業界の横のつながりの再構築。新旧の知人と手を取り合ってハグをして。世界中から集まった人々のお国訛りのある英語。そこから発せられる、大きな音色で満ち溢れる会場。そんな話し声と熱量の渦がとても印象的でした。
漂ってくる芳醇なカカオの香りと人々のざわめきを想像しながら。あなたのお気に入りの一杯を片手に、この香ばしい世界にしばし浸ってみてください。
コーヒーを通して、新しい時代のヒントへと。きっと、あなたをいざなってくれるはずです。
| 2023年「コーヒーデザイン賞」「ベスト・ニュープロダクト賞」受賞製品
EXPOの主催者であるスペシャルティコーヒー協会(SCA)。世界中のコーヒー農家からバリスタやロースターまで所属している、世界最大級の団体です。
そのSCAが選ぶ、その年のベスト賞。これによって、コーヒー業界の流れが決まるとも言われます。では、今年はどのような製品が選ばれたのでしょうか。
コーヒーデザイン賞 (カテゴリー別に3社)
カフェスペース・店舗 :The Boy & The Bear
パッケージ・包装 :Stereoscope
ブランディング : Dear Francis
ベスト・ニュープロダクト賞 (カテゴリー別に6つ)
コーヒーアクセサリー : Ion Beam(アカシア社)
業務用コーヒー:Bar Pro(ラテアートファクトリー)
消費者向けコーヒー :Barista Touch Impress (ブレビル)
オープンクラス :Redefined(レアバード)
スペシャルティコーヒー飲料アディディブ : Puremade Toasted Black Sesame Syrup(トラニー社)
スペシャルティコーヒー以外の飲料 :Ginger Spice Chai Concentrate (アートオブティー)
賞に選ばれなかった製品の中でも、今年、特に目についたもの。それは、ロボットをつかった焙煎、抽出。AI要素が組み込まれた焙煎機械といったテック系商品の数々。
そして近年、どのブランドも力を入れている持続可能・サステナブル製品。また、女性豆生産者、農園での女性の地位向上、ジェンダー平等、マイノリティービジネスなどを全面的に押し出している展示の数も増加傾向に。
このように、現代の国際情勢や社会。さらには、最先端のプロダクトやビジネスコンセプトが、コーヒーという媒体を通して感じられました。
| 2023 全米コーヒー選手権(U.S. Coffee Championships)
豆や製品・プロダクトがハードとするなら、コーヒーチャンピオンシップは、業界のソフト。
EXPO開催中の3日間に行われる全米決選。デンバーまたはボルチモアで、2回の予選を勝ち抜けてきた参加選手が集結。このポートランド本大会での決戦に臨みました。
全米コーヒーチャンピオンとして選ばれた6名(今回は珍しく全員男性)。彼らのほとんどは、ミレニアム・Z世代のバリスタやロースター。
選ばれた6名のチャンピオンが、次に目指すのは世界大会。アテネと台北の会場へ旅立つ年末まで、さらなる技術向上とプレゼン能力を上げる鍛錬の日々が続きます。
全米コーヒーチャンピオン
バリスタ:アイゼア・シーズ(Archetype Coffee ネブラスカ州)
ブリュワーズカップ: ウェンボ・ヤン(Artly Coffee ワシントン州)
コーヒー・イン・グッドスピリッツ: サム・シュローダー(Olympia Coffeeワシントン州)
カップテイスターズ: ジェイク・ドナギー(Olympia Coffee Roastingワシントン州)
ラテアート: ピヤパット・ラプテラウット(Coffee Project NY ニューヨーク州)
ロースティング: アンドリュー・コー(Elevator Coffee オレゴン州)
その中で、地元ポートランド在唯一としてチャンピオンとなったのが、Elevetor Coffeeのアンドリューさん。
世界大会への準備とビジネス運営で猫の手も借りたい位の忙しさの中、特別にインタビューに応じてくれました。
そこから見え隠れする、チャンピオンとなるまでのプロセス、構え、鍛錬。コロナ禍からのビジネスの学びと実践。さらには、現在のコーヒー業界の傾向などをフランクに語っていただきました。
次ページ 全米ロースティング・チャンピオンへの独占インタビュー「新しいビジネスヒントを追い求めるヒントとは?」
著者プロフィール
- 山本彌生
企画プロジェクト&視察コーディネーション会社PDX COORDINATOR代表。東京都出身。米国留学後、外資系証券会社等を経てNYと東京にNPOを設立。2002年に当社起業。メディア・ビジネス・行政・学術・通訳の5分野を循環させる「独自のビジネスモデル」を構築。ビジネスを超えた "持続可能な" 関係作りに重きを置いている。日系メディア上のポートランド撮影は当社制作が多く、また業務提携先は多岐にわたる。
Facebook:Yayoi O. Yamamoto
Instagram:PDX_Coordinator
協働著作『プレイス・ブランディング』(有斐閣)