イタリア事情斜め読み
イタリアにおけるコロナ陽性患者の在宅ケアガイドライン
| イタリア流、コロナウイルス陽性患者の在宅ケア
自宅隔離中の在宅ケア方法として、抗発熱薬、抗生物質への注意とプロトコールが完成。
ロンバルディアの外科医と歯科医のロンバルディア医療秩序連盟は、新しいコロナウイルスに陽性の患者の在宅ケアのためのガイドラインを発表した。
感染症の専門家であるガッリ(サッコ病院)のチームと共同で開発した、その名をバデメカム(vademecum)
地元の医療に関する最新の規定がなかったため、この文書を作成することにしたというジャンルイージ・スパタ代表。在宅ケアの為のプロトコールを作成するにあたり、ミラノのサッコ病院の感染症の責任者であるマッシモ・ガッリ教授らとその協力グループによりvademecumを完成させたという。
ロンバルディアの適応症は、保健省の議定書よりも少し先行していて、まもなく公開される予定。
高等保健評議会の議長であるフランコ・ロカテッリは、
「集中治療への不適切な入院問題は、本当に入院を必要として治療をしなければいけない患者にベットがなくなるかもしれないという問題に直面しているいくつかの地域があるため、このプロトコールを作成しました。在宅ケアの方法について明確かつ適切に対処されるだろうと私は信じています。一般開業医が、コロナウイルス患者の蘇生の為に患者宅へ駆けつけなければいけなくならないように、そして、実際に注意深く継続的な在宅管理のためにするには、どうしたら良いかなど、コロナウイルス患者に与えられる治療法についての指示を与えることが重要であると思っています。
と、毎週火曜日に開かれているの疫学的分析に関する記者会見で述べた。
バデメカム(vademecum) は以下の通り。
○熱がある場合の制熱剤を服用する事。(本当に必要性がなければ抗生物質はない)
○水分補給と酸素レベルへの注意をする事。
○*パルスオキシメーター(pulse oximeter)で血中酸素飽和度を計測する事。
本日のパルスオキシメーター血中酸素濃度。通常。
-- ヴィズマーラ恵子イタリア在住 (@vismoglie) November 13, 2020
マンション全体の消毒作業が11時から始まった。下の階の住人が全員コロナウイルス感染したから。扉の下から白い霧状のものが家中に広がってむせる感じ。毒ガスかと思うくらい。午後2時まで家から出てはいけないとの事。 pic.twitter.com/LHEkUE5VPC
| 入院の基準数値
Covid患者に肺の問題があるかどうかを理解するには、呼吸障害を早期に検出することが重要となってくる。
これは、コロナウイルスに感染した疑い、または陽性が確定している感染患者全員がこの血中酸素飽和度を計測できるパルスオキシメーターを装備することが基本である。
パルスオキシメーター(pulse oximeter)は、動脈血酸素飽和度(SpO2)と脈拍数を採血することなく、指先などに光をあてることによって測定する装置のことで、コロナウイルスに感染したか疑われる場合の目安の基準値は、健康な若者では、95%未満の結果、高齢者および/または似たような症状がある人では、92%まで低下する可能性があるので、早期に呼吸障害があることが判明でき入院する時期の判断材料となる。
パンデミックが始まって以来、最初の第一波がピークの頃の3月末には、このパルスオキシメーターがどこにも売ってなく、かなり品薄状態になった。通常は高くても25ユーロ前後の品だが、高値で転売している悪徳業者もいた。通販大手サイトのアマゾンでは、3月に注文をしても入荷は4ヶ月待ちと表示されていた。イタリアではパルスオキシメーターが大変希少商品となっていた。
ミラノのサンジュゼッペ病院の肺科の責任者であるセルジオハラリ氏は、
常に同じ位置で、手袋を使用せず、場合によってはネイルポリッシュを使用せずに測定を行うことが重要です。数値が4〜5ポイント下がると心配しなければいけません。体温が上がると、血液中の酸素値は変化します。したがって、解熱剤を服用した後にデバイスを使用することをお勧めします»。
と詳しく説明をしている。
コロナウイルス致死率でイタリアは世界でワースト第3位:100人中4人が死亡している。
ワースト1はメキシコで100人のうち10人近くが死亡し、世界で1位にランクされている。2位はイラン。イタリアは第3位で、大変致死率が高い。病院に入院をする前に、自宅で息絶えてしまう人も多いと聞く。
これまでの地域ごとの総死亡者数(データは2020年11月21日現在まで)
ピエモンテ5.496人(+77;昨日+88)
カンパーニャ1.249人(+32;昨日+25)
ベネト3.190人(+67;昨日+66)
エミリア-ロマーニャ5.312人(+47;昨日+ 47)
ラツィオ1.958人(+37;昨日+41)
トスカーナ2.165人(+44;昨日+48)
シチリア1.141人(+43;昨日+43)
リグリア2.227人(+20;昨日+29)
プーリア1.148人(+19;昨日+ 16)
マルケ1.168人(+7;昨日+11)
フリウリ-ベネチアジュリア633人(+25;昨日+28)
アブルッツォ774人(+35;昨日+18)
ウンブリア323人(+9;昨日+21)
ボルツァーノ 462人(+16;昨日+8)
サルデーニャ379人(+12;昨日+5)
トレント577人(+14;昨日+7)
カラブリア 217人(+4;昨日+11)
バジリカータ110人(+6;昨日+ 3)
ヴィッラ・ダオスタ 281人(+3;昨日+7)
モリーゼ 92人(+6;昨日+2)
それでは、自宅隔離の間にどんなことをしていればいいのだろうか。
| 在宅ケアはどの段階の患者に?
それぞれの適応症については、2つのカテゴリー(科学的証拠の質と推奨の強さ)の両方で考慮されるべきであるという。
まず、PCR検査にて陽性が確定された患者のグループと2番目はコロナウイルスの症状があり陽性の疑いがあるグループの2つのクラスに分けられる。
また、コロナウイルス陽性患者との濃厚接触者で、まだ無症状であるのでPCR検査を受けていない陰性なのかも不確定の人もいる。
しかし、PCR検査前に感染を既にしている確率が高く強調されているグループがいる。たとえば、既に陽性で自宅隔離中の人と接触している場合などである。
また、急速な抗原スワブは、症状がほとんどない人や病気の特定の段階で「偽陰性」の結果をもたらす可能性もある。
処方としては、
症候がある患者の場合の治療として、発熱の場合にはパラセタモールを処方される(必要に応じて咳抑制剤を含む)。
脱水を避けるためにたくさんの水を飲むことも推奨されている。
コルチゾンの使用については、
デキサメタゾン(コルチゾン)を用いたステロイド療法による明らかな延命効果は、重度の病気の入院患者で実証されているが、ガイドラインでは、かかりつけ医師のアドバイスに基づいて、家庭でどの特定の治療法に従うことができるかを事前に説明を受ける事とされている。
一方、ジャンルイージ・スパタ代表によると、
「健康的で正しい食事に従い、医者からの指示がない場合はコルチゾンを避けてください。
このコルチゾンはまた、在宅または病院でのケアに有効であることが証明されておらず、適切なモニタリングなしに投与した場合は、患者を潜在的リスクにさらしてしまい推奨されない治療法であると報告されています。
したがって、抗レトロウイルスのロピナビル/リトナビル、抗生物質のアジスロマイシンおよびヒドロキシクロロキンは使用しないでください。
特に、状況に応じた細菌感染の疑いがある場合を除き、アジスロマイシンは推奨しません。服用は避けてください。」
と言っている。とにかく、医師の指示に従うようにしよう。
| 在宅で治療をする患者の特徴とは?
血中酸素飽和度が94パーセント未満になった場合、少なくとも5〜7日間の発熱、特定の肺炎、糖尿病患者、血中グルコースの綿密なモニタリングが必要である。
ロンバルディア州のバデメカム(vademecum)は、免疫系への攻撃を避けるために緊急時にのみコルチゾンの使用について述べている。大臣議定書の草案よりも正確だという。
フランチェスコ・メニケッティは感染症の専門家に、最近病院では90パーセント以下で飽和した場合のコルチゾンを使用しているそうだ。
ヘパリンと酸素が必要
血栓性合併症を起こす可能性が高い患者、例えば寝たきりであるか、ほとんど動かない患者には、抗血栓予防も合理的に行わなければいけない。
ただし、深部静脈血栓症または放射線学的疑いがない場合は勧めていない。
血中飽和酸素濃度とは?
重要な事は、「ケースバイケースで評価する」という事であるという。
この文書には、飽和度が94%未満の場合に、在宅酸素療法の可能性があることが書かれている。
ただし、毎分3リットルを超える酸素または90%未満の飽和度が事前に必要な場合は入院が必要である。
支持的酸素療法が処方されている場合は、酸素レベルを測定するために酸素計を持っていることを前提とし、少なくとも1日2回モニタリングするために患者に連絡があり、値が95/94パーセントを下回った場合、患者はすぐに医者に連絡しなければならない。
ミラノポリクリニックの内科の責任者であるニコラ・モンターノ医師は、「独自の判断や自我流の方法で治癒しようとするのはやめましょう」
«重要な概念は自己治療ではありません-。血中の酸素については、単一の値だけでなく、患者の正常な状態との違いを評価することも大事です。
肺疾患やヘビースモーカーの人は、平均して健康な人口の97/98と比較して、95パーセントでさえも低い酸素レベルです。また、自宅でも1日2〜3回、徒歩3分前後で飽和度を測定することを勧めています»
と付け加えた。
その他、
値が大きく変動する場合は、ウェイクアップコールが必要。(朝起きて直ぐに知らせる)
医師は、一般的な状態に基づいてデータを評価することができるので、酸素に加えて、30秒で呼吸を数え、その値を医師に報告することも役立つという。
*パルスオキシメーター(pulse oximeter)動脈血酸素飽和度(SpO2)と脈拍数を採血することなく、指先などに光をあてることによって測定する装置をまだ持っていない人は、早めに入手をしてもしもの時に備えることをお勧めしたい。
著者プロフィール
- ヴィズマーラ恵子
イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie