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ドイツの街角から

シュピッツナーゲル典子|ドイツ

ドイツワインのDNA「テロワール」を学ぶ旅(3)プファルツ

ライナーワイナリー

同じくイルベスハイムでブドウ畑とワインに情熱を注いでいるライナーワイナリー。

同ワイナリーは、40年以上にわたり、情熱と献身を持ってブドウ畑を耕してきました。クライネ・カルミットをはじめ、約17ヘクタールのブドウ畑はすべてイルベスハイム周辺にあります。

一家の有機栽培は2005年に有機認証に繋がりました。ブドウ畑での高度な手作業と、独自の酵母菌によるブドウ果汁の自然発酵が基礎となり、忍耐を重ねた結果、心と魂を込めた自然な製品が保証されました。その先駆的な取り組みの結果、2011年にはデメター認証を取得しました。

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父ユルゲンさんと共に、2代目スヴェンさんが精力的にワイン造りに邁進しています。スヴェンさんはプファルツ地方で常に新境地を開いている若い世代に属します。ガイゼンハイム大学で醸造学を学んだあと、父のワイナリーを引き継ぎ、徐々にビオディナミに転換していきました。

彼の哲学は、「自然の成り行きに任せ、ブドウ畑やセラーにはできる限り介入しないこと。ワインは土壌、気候、天候が作り出したものを表現するものでなくてはならない」。そのため彼の造るワインは個性と特徴があり、ヴィンテージも同じものは2つとありません。

カトリン・ウィンドワイナリー

イルベスハイムの隣町アルツハイムで自分の名前を付けたワイナリーを経営するカトリン・ウィンドさん(画像下・©DWI)

現在ワイナリーは実家のガレージです。ガレージから始まったビジネスが大成功したというストーリーはワイン業界でもありました。

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ガイゼンハイム大学で学び、2011年に家族が所有する2.5ヘクタールの小さな畑を基盤にワイナリーを設立し、同年に初めて自分のワインを造ったそうです。もとはと言えば、父親の趣味から始まった小さなブドウ畑を極めて立派なビジネスに変え、今では8ヘクタール弱のブドウ畑を耕し、2023年からは有機栽培に転換しました。

彼女のワインはエレガンスと信頼性を象徴しています。ちいさなワイナリーでは、オープンガレージと謳い、年に一度イベントを開催しています。

彼女のサインが刻まれたワインは実にユニークで、個性と輝きに満ちており、綿密な畑仕事が成功の礎となっています。彼女自身が飲みやすく、フィネスと軽やかさを醸し出すワインを望んでいるため、ブドウは早めに収穫。手摘みされたブドウは、畑の天然酵母で自然発酵させる。これらは最も純粋なエレガンスと自然さを備えたワインが生まれます。

カトリンさんの手がけるリースリングはクライネ・カルミットの畑から生まれた白ワイン。石灰岩の畑は私の最大の財産だといいいます。

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ブドウ栽培には避けて通れないテロワール。だが、商品として生産されたワインは作り手の特有な個性と人となりが反映していることを改めて理解しました。造り手もテロワールの1つの要素。試飲する度に、ワインにかける情熱がグラスを通して伝わってきます。

画像上は最終日に宿泊したエーデンコーベンのホテル前に広がるブドウ畑が後方の旧修道院とマッチして素敵な風景でしたので、思わず撮りました。

取材協力・ドイツワイン協会

 

Profile

著者プロフィール
シュピッツナーゲル典子

ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。

Twitter: @spnoriko

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