ドイツの街角から
ドイツワインのDNA「テロワール」を学ぶ旅(3)プファルツ
ナイスワイナリーから南下すること約30kmでワイン産地のフォルストに到着です。ここでスピンドラー家は1620年からワインを醸造しています。現在11代目のマルクス・シュピンドラ―さん(画像下・©DWI)がワイナリーを運営しています。
フォルスト周辺プファルツの森の雨と風の陰にある温暖な気候は、傑出したワインを生産するための素晴らしい条件を提供しています。20ヘクタールのブドウ畑のなかでもキルヒェンシュトゥック、ウンゲホイヤー、ペヒシュタインといった畑は、最高のリースリングワインを生み出しています。
これらの特級畑には、貝殻石灰岩、玄武岩、色砂岩など、様々な種類の岩があり、ブドウの木の深い根は、様々なミネラルを吸収し、ブドウに蓄え、これがワインを特徴付けています。
例えば土壌に含まれる玄武岩は、熱を蓄える役割を果たし、夜間にゆっくりと熱を放出するため、日々の気候の変動を抑えることができます。しかも風通しがよく、温まりやすい土壌は、ミネラルが豊富で、エキスに富み、果実味豊かなワインを育むことができるのです。
同ワイナリーは、有機ブドウ栽培のガイドラインに従ってブドウ畑を耕作しており、自家製の堆肥、多様な緑、厳格な有機植物保護に努めています。
訪問日は、マルクスさんの弟フロリアンさん(画像上)の経営するレストラン併設のワインバーで試飲。近郊のワイナリー2軒オイゲン・ミュラーワイナリー、ゲオルク・モスバッハワイナリーの運営者も集合し、ワインを紹介してくれました。
「ワイナリーは、フォルストの中心に位置しています」と、クリスティ-ネ・ミュラーさん。夫のステファンさんと共に2代目ワイン醸造家として20ヘクタールでブドウを栽培しています。
1935年創設の同ワイナリーは、1767年まで遡りもともとワインの樽工房だったそう。現ワイナリー1代目のクルト・ミュラーさんも若い頃に自分でオリジナルの樽を作り、その樽は今でも特級畑のリースリングと赤ワインに使われて強い個性を持つワインを醸造しているそうです。
「管理された環境に優しいブドウ栽培のガイドラインに従って作業を行っています。機械的な土壌耕作、環境に配慮した植物保護、収穫時に選別されたブドウは、ステンレス・タンクや木樽でのゆっくりとした冷却発酵や熟成と同様に重視している点です」(クリスティ-ネさん)
モスバッハー家の先祖は200年以上。ここフォルストでワイン生産者として暮らしてきました。1991年から同ワイナリーを運営するのは、ザビーネ・モスバッハー=デューリンガーさん(3人の画像・右)とその夫ユルゲン・デューリンガーさん。22ヘクタールのブドウ畑で栽培し、プファルツのトップワイナリーのひとつとなりました。
試飲で印象に残っているのは、清涼感あふれる優しい味わいの2022年リースリングGG です。
ちなみにエチケットに表示されているGGとはグローセス・ゲヴェックスの略。格付けされているブドウ畑は、ドイツで4段階ありますが、グローセス・ゲヴェックスとは(VDP格付の辛口の最高級格付)の基準で生産されるワインです。
注・VDP(ドイツ・プレディカーツ・ワインエステート協会)。VDPは、厳格な審査過程を経て新たに入会できる、ドイツを代表する高品質ワインの目印となっています。
ワイン造りの哲学は、自然と調和しながら、最高の品質を追求すること。2012年以来、有機農法に従って栽培しています。
次は若手の活躍が期待される数々のワイナリー・・・
著者プロフィール
- シュピッツナーゲル典子
ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。
Twitter: @spnoriko