ドイツの街角から
バーデン地方の「ワインと食のハーモニー」を探る旅 その1
2つのワイナリーを経営、ワイナリー「ハイトリンガー」とワイナリー「ラーベンスブルク城」へ
最初に訪問したワイナリー・ハイトリンガーのあるクライヒガウ地域エストリンゲン=ティーフェンバッハは、オーデンヴァルドとネッカー川、南は黒い森、西はアッパーライン平原に隣接しています。ハイトリンガーはワイナリー、ホテル、ゴルフ場そしてレストランと多角的な経営を手がけ、イベントや結婚式パーティ会場として人気のスポットです。
ちなみにワイナリーにホテル、ゴルフ場、レストランが一体となった施設は、ドイツでもめったに類を見ないといいます。
ハイトリンガーではワイン試飲、ブドウ畑の散策やワインセラーツアーなど様々なサービスを提供しています。
12世紀にはすでに、シトー派がクライヒガウ地域の石灰質の丘の特別な条件を発見していたそうです。ピノ・ノワール、ピノ・ブラン、ピノ・グリ、ピノ・ムニエ、シャルドネ、オーセロワなど、ブルゴーニュ・ブルグンダーのブドウの木は、フランスの故郷と同じように理想的な条件を満たしてくれ、美味しいワインが醸造されています。
2010年以降、ブドウ畑は持続可能性の原則に基づく有機農法の認定ガイドラインに従っています。さらに2014年からは、ビオディナミ農法(ルドルフ・シュタイナー提唱の有機栽培・農薬と化学肥料を極力用いない)を導入。大変な労力と時間がかかりますが、この農法で自然の恵みがたっぷり含まれるワインが生産できるそうです。
アロマの深みを出すために、そして発酵前にエキス分をできるだけ多く抽出するために、冷却しながら最長6日間、ブドウの皮と果汁をそのままにしておき、これにより、ワインに特別な個性と保存性を持たせているというこだわりようです。
2012年からハイトリンガーとラーベンスブルク城のワイナリーは、「Weingüter Heitlinger & Burg Ravensburg GmbH」の所有となり、CEOクラウス・ブルマイスターさん(下の画像)、醸造マイスターのダニエル・ルップさんが管理しています。
2つのワイナリーの説明を聞いた後、クラウスさんの案内で「ラーベンスブルク城」周辺のワイン畑を見学しました。この城は、ローマ人がすでにワインを栽培していたといわれる山の頂に位置しており、約800年の歴史を持つこの城の南側の斜面で栽培するブドウの特色はミネラルが豊富な点です。
夕食は、クラシックな地中海料理のアラカルトとモダンな創作料理を提供するゴルフクラブハウスのレストラン「アルバトス」でいただきました。ワインはラーベンスブルク城のプレミアムワイン、VDPワイナリーのハイトリンガーワインと共に、心地よいひと時を過ごしました(VDP とは: ドイツ・プレディカーツワイン生産者協会。高品質ワインの生産者が結集した団体)。
次はオフィス業務からワイン醸造に転職し、始めたワイナリー・クルンプへ
著者プロフィール
- シュピッツナーゲル典子
ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。
Twitter: @spnoriko