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ドイツの街角から

シュピッツナーゲル典子|ドイツ

ドイツサッカー連盟ケラー会長辞任について思うこと いったい何があったのか

13代目会長としてケラー氏の在任中、内部では分裂したリーダーの中での権力闘争が続いていた。

前任会長のヴォルフガング・ニアスバッハ氏とラインハルト・グリンデル氏は、早々に辞職した。しかも自身の失言により、ケラー氏はDFBスポーツ裁判所にも、問われる羽目になった。

ケラー氏と他のDFBトップたちとの間にある敵対的な雰囲気は、彼だけの責任ではない。宿敵と言われるDFB書記長フリードリヒ・クルティウス氏とは、数え切れないほどの議論と和解の試みがなされた。

「ヒトラーの裁判官」を口走ったことで、別の問題も浮上した。

ケラー氏はミュンヘンおよびオーバーバイエルン行政地区ユダヤ人コミュニティ会長(ドイツユダヤ人中央評議会の元議長)シャーロット・クノブロッホさんと面談した。「自分の発した言葉が適切でなかった」と謝罪をすると、クノブロッホさんからポジティブな言葉をもらった。

彼の思慮の浅い発言が間違いであることは疑う余地もなく、彼自身もすでに謝罪を求めている。しかし、たった一度の言葉の過ちは、ケラー氏の長年の貢献を取り消すものではなく、また、私が知っているフリッツ・ケラーという人物を変えてしまうものでもありません。

DFB会長ケラー氏は、責任ある活動に尽力し、サッカーが社会全体の中で果たすべき重要な役割を理解している人物として、私は以前から知っています。

そのため、面談を受け入れました。友好的でオープンな交流をしたことを非常に嬉しく思っています。 

「葛藤の中で感情的になって言ってしまい、深く反省している。それは私や私の態度とは何の関係もありません。また、シャーロット・クノブロッホさんのアドバイス、励ましの言葉、率直な会話に感謝しています」(ケラー氏)

その後、ケラー氏が自らの意志で会長辞任の判断を下したことから、スポーツ裁判所の訴訟は停止となった。

深いリーダーシップの危機に瀕しているDFBの倫理委員会は、今後も検証を続ける。ちなみに同委員会のスポークスマンは、クノブロッホさんの息子である弁護士ベルント・クノブロッホ氏だ。

DBFは、構造的にも人事的にも再配置と改革が必要であり、何よりも会長の権限を強化する必要がある。今夏の欧州選手権と2024年のホーム欧州選手権を前に、DFBは信頼できる新しいスタートが求められている。

来年初めの総会まで会長職は、ライナー・コッホ氏(アマチュア担当)とペーター・ピータース氏(プロ担当)の2人の副会長が、暫定的に率いる予定だ。

DFB次期会長には現在、フィリップ・ラーム氏(FIFAワールドカップ2010年と2014年ドイツ代表キャプテン)、会長のパートナーとしてルディ・ヴェーラー(2000年から2004年までドイツ代表キャプテン)の名が挙がっているが、先行きは不明だ。

DFBを取り巻く緊張感はしばらく続きそうだ。

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筆者は、あるイベントでケラー氏と同じテーブルを囲んで会食する機会があった。DFB会長になる前のことだったが、その時の会話を通して、同氏はとても温厚篤実な人柄という印象を受けた。

コロナ禍が落ち着いたらケラー氏を訪ね、ゆっくりお話を伺いたい。

 

Profile

著者プロフィール
シュピッツナーゲル典子

ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。

Twitter: @spnoriko

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