パスタな国の人々
海辺の小さな町に生まれた世界初サステナ農業システム
イタリア北西部、ジェノバを州都とするリグーリア州は、地中海に面した細長い州だ。弓状にカーブした西端はフランスのコート・ダ・ジュールに接し、ぐっと南下した隣はトスカーナ州という位置にある。その海沿いの州の小さな街に、数年前から世界初にして唯一の、あるプロジェクトが立ち上がっている。
それは「NEMO'S GARDEN ネモズ・ガーデン」。水中に沈めたポリカーボネートの球の中で植物を育てる実験が成功し、世界の科学者や農業、食品関連の分野から密かに注目を集めているのだ。
私が暮らしているピエモンテ州トリノから、ほぼ真南に約150キロのところにあるノーリという小さな海の町で、ネモズ・ガーデンは生まれた。実は私は20年ほど前からほぼ毎年、夏をここで過ごしているのだが、中世の街並みや塔が残るノーリというその町は、「borgo piu bello d'Italiaイタリアのもっとも美しい村」に加盟する自治体の中でも特に美しくてかわいらしい町と言われている。スーパー1軒、酒屋2軒、パン屋とお菓子屋が各2軒、魚屋1軒肉屋が二軒、そしてレストランやバールがいくつかずつ。端から端まで歩いても15分とかからない。人口は約2700人だそうだから、日本の市町村法に基づけば、「町」ではなく「村」と呼ばなければいけないサイズだ。
ノーリの中世の街並みを愛犬グレースと。写真:筆者提供
このノーリの海が殊の外美しい。NPO国際環境教育基金(FEE)が定める「ブルーフラッグ」認証を毎年受けていて、私がバカンスへ行った写真を見せびらかすと、友人たちはこぞって、海キレーイ! どこへ行ったの? と聞いてくる。そんなところだ。
著者プロフィール
- 宮本さやか
1996年よりイタリア・トリノ在住フードライター・料理家。イタリアと日本の食を取り巻く情報や文化を、「普通の人」の視点から発信。ブログ「ピエモンテのしあわせマダミン2」でのコロナ現地ルポは大好評を博した。現在は同ブログにて「トリノよいとこ一度はおいで」など連載中。