パスタな国の人々
海辺の小さな町に生まれた世界初サステナ農業システム
ノーリの海は透明度がとても高いが、Nemo's Gardenには透明度自体はそれほど重要ではないそうだ。写真:筆者提供
その美しい海に生まれたネモズ・ガーデンは、ジュール・ヴェルヌの小説『海底二万マイル』に登場する船長の名前にちなんだというプロジェクト。ある企業家が、自分の大好きな二つの趣味、ダイビングとガーデニングを一緒にして海の限界に挑戦するような、何か面白いことはできないものか、という友達とのおしゃべりから生まれたアイデアなのだそうだ。その起業家とは、セルジョ・ガンベリーニ氏。ダイビング用のフルフェイスマスクで知られるオーシャン・リーフ・グループの創立者だ。
ビーチから約100mのあたり、深さ6~10メートルほどの海底に鎖で固定された直径約2メートルの透明な球は空気で満たされている。その中に栽培台が設置され、そこで現在、約40種類の植物が育てられている。リグーリア州の名物「ペースト・ジェノベーゼ」の主材料であるバジリコの他、オレガノやマジョラム、ミントなどのハーブ類、レタスやルッコラなどの葉野菜、アロエベラや大豆などなどだ。2012年、最初にプロジェクトがスタートした時、球はたった一つで、バジリコの苗を植えて育てた。その成功を得て、次は種から育てることに挑戦。毎年改良を重ね、今では球は6つに増えた。「今年は球の中にWi-Fiも繋がったんだよ」とプレス担当のフェデリーコ・ジュントは笑う。
写真:OceanReefGroup2020
著者プロフィール
- 宮本さやか
1996年よりイタリア・トリノ在住フードライター・料理家。イタリアと日本の食を取り巻く情報や文化を、「普通の人」の視点から発信。ブログ「ピエモンテのしあわせマダミン2」でのコロナ現地ルポは大好評を博した。現在は同ブログにて「トリノよいとこ一度はおいで」など連載中。