スペインあれこれつまみ食い
スペイン政府新たなインフレ対策を発表 消費税ゼロも
スペインのペドロ・サンチェス首相は先月27日、国民の負担を緩和するための新たなインフラ対策を発表しました。昨年からガソリンの割引、ガス代の減税など様々な対策を講じてきたスペイン政府。それらの対策の甲斐あってか電気代の高騰はヨーロッパの中でも最低に抑えられていますが、食料品の値上がりには歯止めが効きません。12月のインフレ率は5.8%(コアインフレ率7%)と、ピークだった7月の10.8%からかなり落ち着いてはきましたが国民の負担はいまだに大きく、政府は今年も引き続き支援を継続するようです。
食品の減税
今回一番大きく報じられたのは値上がりが深刻化している食品の付加価値税(IVA)の減税です。付加価値税は日本でいう消費税のようなもので、品目によって付加価値税の税率は異なります。1月から始まった新しい対策では、野菜や卵など最低限の食生活を送るために欠かせない食材の通常4%の付加価値税がゼロ(非課税)になり、また通常10%の付加価値税がかかるパスタと調理用油は食卓には欠かせないとして5%に減税することが発表されました。減税期間は最大6ヶ月間とされていますが、コアインフレ率が5,5%を下回るようになったら5月末で元の税率に戻されるようです。
スペインではロシアのウクライナ侵攻が始まってから食料品の値上がりが著しく、スペイン料理に欠かせないオリーブオイルの値段は前年と比べて56%も上がっているほかにも、小麦は38%、牛乳は31%の値上げが行われています。さらにそれに伴ってパンなどの加工食品の値段にも軒並み高騰しており貧困層を中心に家計への大きな負担となっていた事から、この対策は国民にとって喜ばしいニュースとなった事でしょう。しかし一方で肉や魚は減税の対象外となることに対して、これらの品目に対しても減税を適用するように求める声もあがっています。
低収入世帯への補助金と家賃の凍結
減税の他にもサンチェス首相は一定の所得以下の家庭を対象に補助金を支給することを発表しています。受給資格があるのは年収が27,000ユーロ(約380万円)以下の世帯で、申請すれば200ユーロを受け取ることができるそうです。
さらに賃貸契約更新の際に大幅な家賃値上げを行わないように昨年初旬から家賃の凍結が行われていましたが、その措置が2023年6月まで延長されることが発表されました。6月以降は凍結は解除されるものの、年末までは上限2%しか家賃値上げを行うことができないようです。これは賃貸に暮らす人々にとっては安心できるニュースである一方で、貸主にとっては頭の痛いニュースになってしまうかもしれません。現にこれらの対策を受けて物件を手放してしまう人も続出しているようで、家探しをする際に賃貸物件の選択肢が減ってしまっているという話も耳にしました。
電気・ガス・ガソリン
ヨーロッパ各地で異常な値上げが起こっている電気とガス。これから冬が本格化していくことからこれらの料金の高騰はすべての家庭に影響を与えていることでしょう。スペインでは昨年から電気にかかる付加価値税10%を5%に、さらにガスにかかる付加価値税21%を5%に減税する対策が取られていましたが、これらの対策を6月まで延長することが発表されました。
一方ガソリンに関してはこれまでリッターあたり20セントの値引きが行われていましたが、2023年以降は一般車には値引きを行わず運送業者や畜農業従事者にのみ対象を絞って対策を継続していくようです。ガソリンの価格は昨年4月はリッター当たり約1,8ユーロでしたが、12月には約1,6ユーロと若干の落ち着きを見せています。
その他にも公共交通機関の運賃の割引や農業・漁業従事者への補助金など、政府は新年のスタートとともに様々なインフレ対策を開始しました。一部では今年5月に行われる選挙の票稼ぎではないかと皮肉の声も上がっていますが、目的はどうであれこれらの対策は一般市民の我々にとってはありがたいものです。
著者プロフィール
- 松尾彩香
2015年スペイン巡礼(カミノデサンティアゴ)フランス人の道を完歩。スペイン語習得のために渡ったコロンビアでコーヒー農家になるもスペイン移住の夢が捨てられず、現在はコロンビアのコーヒー事業を継続しながらマドリードのベッドタウンでひっそりとスペインライフを満喫中。
Twitter: @maon_maon_maon