スペインあれこれつまみ食い
スペイン豪雨災害 死者は100人か 史上最悪規模の被害
スペインで発生した記録的な豪雨(DANA:寒冷低気圧)による死者数が増え続けており、バレンシア自治州の緊急対策本部は、同州だけで92人の死亡を確認したと発表しました(10月30日現在)。死者は今後100人を超えるとも言われています。
被害は広範囲に広がる
特に深刻な被害を受けたのは、バレンシア市から約10キロメートルに位置するパイポルタ市です。同市は豪雨により壊滅的な被害を受け、外部との連絡も途絶えるほどの事態となりました。市長の発表によると、同市だけで40人の住民が犠牲となり、そのうち6人は高齢者施設の入居者でした。
カスティージャ・ラ・マンチャ自治州でも、クエンカ県ミラで88歳の女性が、またアルバセテ県レトゥルでも1名が死亡。さらにアンダルシア自治州のマラガ県アローラでは、救助された71歳の男性が翌日死亡が確認されました。
人的被害に加え、インフラへの打撃も深刻です。バレンシア自治州では、バレンシア市周辺の鉄道網が浸水や土砂の影響で運行を停止し、国道のほとんどが通行止めとなっています。他州とバレンシア州をつなぐ交通が完全に麻痺している状態は現在も続いています。
Qué salvajada. Qué barbaridad. pic.twitter.com/ZFrU5XwSo3
-- ⚫️ El DiSputado® (@NoSoyLaGente) October 30, 2024
初動対応に疑問の声
現在様々な機関が対応や救助活動を続けていますが、そんな中初動対応の適切性に関する疑問の声が上がっています。数十人の死者と行方不明者、そして甚大な物的被害をもたらしたこの災害で、より効果的な対策が可能だったのではないかという指摘が出ているのです。
特に問題視されているのが警報発令のタイミングです。国立気象庁(Aemet)は当日朝、バレンシア南部沿岸地域に最高レベルの赤色警報を、その他の地域に黄色警報を発令。数時間のうちに警報レベルは橙色から赤色に引き上げられました。しかし、州内全域の携帯電話に避難警報が発信されたのは夜20時10分と、非常に遅かったとされています。
避難警報が発信されたころ、主要幹線道路はすでに通行止めとなっており、多くの通勤者が帰宅途中で立ち往生。この交通渋滞が消防や市民保護隊の被災地への到着を遅らせる結果となりました。さらにウティエル市では、マグロ川の氾濫により市街地が浸水。バレンシア州政府は軍事緊急部隊(UME)の支援を要請しましたが、ベテラ基地から部隊を派遣する必要があったため、現地到着時にはすでに日没が迫っており救助活動を困難にさせました。
さらに、バレンシア州のカルロス・マソン知事が、前政権が計画していた州独自の緊急対応部隊(UVE)の設立を撤回していたことについても批判の声があがっています。もしも緊急対応部隊を設置していたら、これまでの人が命を落とすこともなかったのかもしれません。
eh que está pasando en Valencia tengo miedo pic.twitter.com/qtuupKzupx
-- aиa (@pasalakua) October 29, 2024
気象庁によると、今回の寒冷低気圧(DANA)による降水量は20年で最多だったといいます。
これほどまでの被害を出した今回の災害は気候変動への対応や防災体制の見直し、都市計画のあり方など、多くの課題を浮き彫りにしました。今後の復旧・復興とともに、これらの課題への取り組みが求められています。
街の様子
※ショッキングな映像も含まれますのでご視聴にはご注意ください。
著者プロフィール
- 松尾彩香
2015年スペイン巡礼(カミノデサンティアゴ)フランス人の道を完歩。スペイン語習得のために渡ったコロンビアでコーヒー農家になるもスペイン移住の夢が捨てられず、現在はコロンビアのコーヒー事業を継続しながらマドリードのベッドタウンでひっそりとスペインライフを満喫中。
Twitter: @maon_maon_maon