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トルコから贈る千夜一夜物語

木村菜穂子|トルコ

大エジプト博物館がついに悲願の試験オープン

筆者撮影 ‐ 大エジプト博物館の展示物

2024 年 10 月 16 日に大エジプト博物館が試験オープンしました。この博物館は「The Grand Egyptian Museum」という英語の名称をとって「GEM」とも呼ばれます。これにより、20 年越しのプロジェクトがついに公開されたことになります。

大エジプト博物館はエジプトの国家の威信をかけたプロジェクトで、総工費は 10 億ドル (約1520億円) といわれています。現在は試験オープンであるためにまだすべての展示物が整っているわけではありませんが、最終的には世界最大規模となる 10 万点以上の展示物が公開される予定です。この博物館はギザにあり、ギザのピラミッドを一望できる最高の立地です。

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筆者撮影 ‐ ギザのピラミッドがパノラマで見える立地

2006 年に日本政府は「大エジプト博物館建設計画」への円借款供与を決定しました。それから実に20年ほどの月日が流れたことになります。この間「アラブの春」による政情不安があったり、工費がかさんだり、コロナがあったり...オープンは遅れに遅れました。最終的に日本政府が負担したのは総工費の約 6 割といわれています

何度も何度も「今年こそはオープン」と言われていましたので、エジプト旅行に来られるお客様の中には「オープンはまだですか?」と聞かれる方も多く、心苦しく思っていました。今後はギザのピラミッド観光に合わせて博物館もご観光いただけます。といっても、先に書いたように現時点では試験オープンの段階です。

ツタンカーメンの展示場などはまだオープンしておらず、お宝の数々はまだ未公開のままです。公開されれば、ツタンカーメンのお墓に遺されていた 5000 点以上の展示物が世界で初めて一挙公開されることになります。きっとこれを楽しみにしておられる方も多いことでしょう。公開は 2025 年 2 月ともいわれていますが...そこはエジプト。さて、どうなることやら。

とはいえ、この博物館のオープンはたとえ試験的といえども非常に重要です。ガザの紛争の影響で中東全体の観光が落ち込んでいる今、この大エジプト博物館はエジプト観光の再ブームの火付け役になるのではと期待されています。

現在見ることができるのは、メインギャラリー (常設展示場) です。常設ギャラリーは 12 の部分に区分されています。古王国時代から始まり新王国時代に至るまでの時代ごとに分けられており、それぞれの時代も「社会」「王権」「宗教」という3つのカテゴリーごとに分けられています。

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筆者撮影 ‐ 常設ギャラリーの12の区分

高級感が漂う博物館ですが、1つ目の見どころは入館してすぐのホールです。ラムセス 2 世の巨象がそそり立ちます。これはもともとはアスワンにあったもので、13 世紀ごろにメンフィスに移されたようです。その後砂に埋もれて忘れ去られていたのですが、19 世紀に再発見され、最終的にカイロに持ってこられたようです。3000 年以上前の巨象で、修復こそされているもののオリジナルです。9 メートル程あり、重さは 80 トンを超えるそうです。

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筆者撮影 ‐ ラムセス2世の巨象

その後、常設ギャラリーへと続く階段がありますが、この階段には異なる時代のファラオの像や神々の像が主に展示されています。その数は約50体ほど。この階段を登りきるとギザのピラミッドがパノラマで見えるようになっています。常設ギャラリーへとつながるこの階段部分にはエスカレーターもありますので、足腰が少し心配という方でも安心です。

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筆者撮影 ‐ 階段部分に設置された展示物の一部

さて、先に書いたように常設ギャラリーは12に区分されており、かなり展示物が多いです。しっかり見ようと思うと 3‐4 時間はかかります。最終的に 10 万点以上の展示物になると、見学は 1 日がかりになるかと思います。カフェなどもありますので、今後ギャラリーの増設に伴い、お時間のある方は一日過ごす覚悟で来られても良いかもしれません。あるいは、自分が好きな時代やファラオにフォーカスして、ピンポイントの観光をするのもアリですね。

各展示物には、日本語のタイトルが全て一番上に記載されています。日本はこの博物館建造の最大の支援国なので、こういう配慮は有難いです。ただし、詳しい説明は英語とアラビア語のみ。とはいえ、タイトルが日本語で書かれているだけで観光はぐっとしやすいと思います。

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筆者撮影 ‐ 日本語のタイトルが上部に‼

気になる入場料ですが、現時点では外国人の大人 1 人あたり 1200 エジプトポンド。25 ドルほどです。ツタンカーメンの展示室が公開されれば、1750 エジプトポンドほどになるのではと思います。

とにかく見応え抜群のこの博物館、建物自体が芸術作品です。経済不況にあえぐエジプト。この博物館がたくさんの人をエジプトに引き付けるツールになることを願っています。

 

Profile

著者プロフィール
木村菜穂子

中東在住歴13年目のツアーコンサルタント/コーディネーター。ヨルダン・レバノンに7年間、ドイツに1年半滞在した後、現在はトルコ在住4年目。メインはシリア難民に関わる活動で、中東で習得したアラビア語(Levantine Arabic)を駆使しながらトルコに住むシリア難民と関わる日々。

公式HP:https://picturesque-jordan.com

ブログ:月の砂漠―ヨルダンからA Wanderer in Wonderland-大和撫子の中東放浪記

Eメール:naoko_kimura[at]picturesque-jordan.com

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