Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
クロコダイル・ダンディーの名優、水牛のチャーリーに会いに行ってきた!
水牛のチャーリーを知っているだろうか?
1980年代後半、米国を皮切りに、世界中に一大オーストラリア・ブームを巻き起こした大ヒット映画「クロコダイル・ダンディー」に登場する水牛のチャーリーのことだ。
1986年に公開された「クロコダイル・ダンディー」は、ノーザンテリトリーの奥地でワニと格闘しながら暮らす、『クロコダイル・ダンディー』の異名を持つ田舎者の主人公ミック・ダンディー(俳優:ポール・ホーガン)が、世界一の大都会ニューヨークで生まれて初めて洗練された文明に触れ、破天荒な性格とコテコテのオージー訛りの英語で騒動を巻き起こすというストーリー。
主人公ミックの型破りでハチャメチャな言動や行動に、誰しも抱腹絶倒してしまうこの映画は、同じ英語圏でありながら、カルチャー・ギャップを描いた痛快なコメディ映画として、公開されるや否や、世界中で大ヒット!アカデミー賞脚本賞にもノミネートされ、その後、2本の続編が作られたので、覚えている方も多いのではないだろうか。
オーストラリアの水牛とチャーリー
チャーリーは、映画の中の印象的なシーンで度々登場する。巨体を操りながら、まるで映画のストーリーを理解して演技をしているかのような絶妙な仕草で、たちまち観客の心を惹きつけ、一躍人気者となった。
オーストラリア北部、とりわけノーザンテリトリーの氾濫原が広がる地域には、チャーリーのような水牛が野生下で生息している。もともと、オーストラリア大陸にいた固有種ではなく、19 世紀に、北部の遠隔地に肉を供給するために、アジアからもたらされた。しかし、その後、牛の牧畜が盛んになったことから、放棄され、野生化したものだ。
この国における野生の水牛は、ときおり想像を絶するようなニュースにもなる。例えば、猛スピードで走行してきた大型4WD車ランドクルーザーと正面衝突し、ランドクルーザーが大破。運が悪ければ、運転者も水牛も事故死となるが、水牛はそのまま逃げ去ったという話もあるほどだ。それほど、強靭な体躯を持つ生き物でもある。
チャーリーは、1974年に行われた野生水牛の大量殺処分で孤児となり、農場で育てられたという。大人しくて人懐っこい性格から、映画出演のオファーが舞い込んだのだそうだ。
映画に初めて登場した時から14年後の2000年、チャーリーは肺炎にかかり、飼い主が安楽死を選択。惜しまれながら、この世を去った。チャーリーの死後、チャーリーを心から愛する人たちからの強い要望もあり、剥製として地元のパブに展示されることとなったのだ。
剥製となったチャーリーは、ノーザンテリトリーの田舎のパブでひっそりと、その存在を後世へと伝えていく...はずだったが、世界中のクロコダイル・ダンディー&チャーリーのファンが黙っていなかった!
CHARLIE THE ACTUAL BUFFALO FROM CROCODILE DUNDEE. This is the best day ever. pic.twitter.com/VsvBv901qB
-- barbara (@thatgeordiegirl) April 12, 2016
映画公開から30年以上経った今も、世界中からチャーリーに会いにやってくる人が後を絶たない。
チャーリーに会えるパブ「アデレード・リバー・イン」
ノーザンテリトリーの州都ダーウィンから113km。スチュワート・ハイウェイを車で1時間半ほど南下すると「アデレード・リバー」という小さな町にたどり着く。
スチュワート・ハイウェイ沿いに建つこの町唯一のパブ「アデレード・リバー・イン」が、チャーリーのいるパブだ。
アデレード・リバーの人口は300人ちょっと。チャーリーを知らない人は、もちろんいない。仕事を終えた午後や休日は、このパブに集って、酒を酌み交わす。
オーストラリアの辺境の地、アウトバックの雰囲気たっぷりのこのパブには、国内外から年間何千人もの観光客が訪れるという。広大な敷地の一部は、キャラバン・パーク(オートキャンプ場)にもなっており、宿泊施設も併設。ダーウィンとアデレードを結ぶ主要幹幹線道路スチュワート・ハイウェイ上にあるから、オーストラリア縦断の移動の途中で、ここに一泊するのもおすすめだ。
カルチャー・ギャップを描いたコメディ映画の傑作として、今も色褪せない映画「クロコダイル・ダンディー」。映画を観た後は、在り日のチャーリーの姿に思いを馳せながら、ぜひ一度、アデレード・リバーを訪れてみてほしい。チャーリーは、スクリーンで見せてくれたやさしい眼差しで旅人を迎えてくれる。これからも、ずっと。〈了〉
▼Adelaide River Inn アデレード・リバー・イン
Special thanks to:Tourism Australia, Tourism NT (Northern Territory)
著者プロフィール
- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/
メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/