パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです
パリのスイーツ界に急激に拡大するクッキー人気
マカロン、マドレーヌ、タルト、エクレア、ショコラ・・などなど、フランスを代表するようなスイーツが数多くあるなか、ここ数年、パリでは、クッキー人気が急速に拡大しています。パリでなぜ?クッキー?と、ちょっと首を傾げたくなるところもあるのですが、いわゆる長くフランスにあるサブレやビスキュイとは違うクッキーの存在感がグングンと増してきて、いわゆる大ぶりの、ゴツゴツとした外観のアメリカから渡ってきたクッキーが、それこそ、どこのブーランジェリーにも置かれるようになり、専門店も急増して、行列ができています。
クッキー人気の理由
フランス人は意外にも、かなり保守的な味覚の持ち主で、特に、ひと昔まえの世代のフランス人は、フランスこそ世界一の食文化を持っていると思い込んでいるようなところもあり、あまり、積極的に異国の食文化を受け入れない感じがありました。特にアメリカのものというと、過度に毛嫌いしたり、こばかにしたりするようなところがあった気がします。現に、私のフランス人の夫などは、まさにこのタイプで、ハンバーガーやポップコーンなどは、毒のように見下すようなところがあり、例えば、マクドナルドなどに関しても、本当は大好きなくせに、こんなゲスで不健康な食べ物、手で食べるものなど(フランスのサンドイッチだって手で食べるではないか!何言ってるの?と私は思っていましたが・・)・・などと嫌っているにもかかわらず、私が(特に大好きというわけではなくとも)、「今、このセットを買うと、グラスが付いてくる!」などというのにつられて、たまにマクドナルドのセットを買ってきたり(一応、家族全員分のグラスが欲しいのでみんなの分のセットを買う)すると、誰よりも美味しそうにあっという間に平らげていました。
つまり、うちの夫のように、アメリカのものというだけで、毛嫌いする層が以前は、けっこういたのですが、今では、マクドナルドは、フランスで一番人気のあるレストランと言われるようになり、今の若い世代のフランス人は、アメリカに対してだけでなく、国境を越えて、新しくて魅力的なものは、寛容に受け入れて、自分たちの生活に取り入れるようになったのです。パリ市内のお店などでも、あたりまえのように英語で話してくれる人が増え、躊躇いなく朗らかに英語で話してくれる人が増えたのも、そんな若者たちのおかげです。
ブーランジェリーのクッキーとクッキー専門店
今では、大ぶりのフレッシュ?なクッキー(いわゆるスーパーなどで箱入りで売られているクッキーではない)は、どこのブーランジェリーにおいても堂々たる存在感を示し、マカロンを置いていないブーランジェリーはあっても、クッキーを置いていないお店はないくらいの位置を獲得しています。このブーランジェリーにおけるクッキーには、フランス人のデザートや間食の習慣が関連しており、同じように並べられているタルトやエクレアなどと肩を並べるような位置付けになりつつあります。フランス人は必ずと言っていいくらい食事の後には、デザートを食べる習慣があり、例えば、昼時になるとブーランジェリーには、サンドイッチやサラダなどを買う人々で行列ができていることが多いのですが、皆、昼食用のサンドイッチに加えて、なにかデザートも添えて、買っていく人が多いのです。
このデザートの中で、クッキーを選ぶ人が増えているのは、それがフランス人の好みに合っているということは言うまでもありませんが、その価格帯(だいたい、ブーランジェリーの大ぶりなクッキーは1枚 2.5ユーロから 3.5ユーロ前後(約400円~500円程度)で、他のタルトなどのケーキ類よりも若干安く、しかも食べ応えは満点で、しかも、デザートとして食べきれなかった場合の保存もしやすいという利点もあるのです。このため、昼時のブーランジェリーの行列などを観察していると、実に昼食とともに、このクッキーを買っていく人が意外にも多いのです。
気が付けば、いつの間にか急増し、しかも行列が絶えないクッキー専門店
このクッキー人気、専門店が先だったのか?ブーランジェリーが先だったのか?はわかりません。しかし、いくらクッキー人気が高まっているとはいえ、専門店とは・・クッキーだけでお店が成り立つのかと思いきや、人気のクッキー専門店に行ってみれば、昼時だけ行列ができているブーランジェリーと違って、こちらは、なんと一日中、ほとんど行列が絶えることがないほどの大人気です。その場で焼いている焼き立てクッキーを売っているお店のクッキーは、ブーランジェリーのクッキーに比べて、少々、値段はお高めで、3.8ユーロから5ユーロ(約600円~800円程度)くらいですが、それが焼きあがるそばから、どんどん売れているのです。いわゆるさっくりとしたクッキーではなく、中はしっとりした半生タイプのようなソフトタイプのクッキーで、ショコラ(ブラック・ミルク・ホワイト)、キャラメル、ナッツ、抹茶、ゴマ、ドライフルーツなどのバリエーションに富んだトッピングを揃えています。このソフトタイプのクッキー、食感からは、考えようによってはどこかケーキに近い感じもあります。
食べ応えからいっても、もうこれってケーキと遜色ないくらいではないか?と思うと同時に、何よりもこのクッキー専門店のドアを開いた途端に店内に香るクッキーの焼ける独特な香ばしい香りが飛び込んできて、これがまた、購買意欲に拍車をかけます。ブーランジェリーなども焼き立てのクロワッサンの香りなど、いわゆる焼き立てパンの香りにそそられることは多いですが、このクッキーを焼く香りというのは、もっと刺激的な気がします。嗅覚にダイレクトに訴えてくる感じ・・これはなかなかたまりません。
お店の前には行列と、買ったばかりのアツアツのクッキーを待ちきれずに、ただちに頬張っている人、思わず、興奮して食べている人に、「ここは、何が一番美味しいんですか?」などと聞いてみると、喜んで教えてくれます。そして、食べ終わると再び、店内に戻って、お持ち帰り用のクッキーを爆買いしていました。クッキーは、しっとりタイプのため、焼き立てだと、気をつけないとホロホロと崩れてしまいそうになるので、箱詰めにしてもらった方が賢明です。頼めば、1個からでも箱に入れてくれます。
私など、行ってみるまでは、クッキー1枚に4ユーロも5ユーロも払うなんて、ちょっと高すぎない?と思って、今まで、足を運ぶことはなかったのですが、考えようによっては、ケーキ1個よりも、若干安めで食べ応えは充分、しかも、何より、食べてみれば抜群に美味しい!やっぱり人気が出て、行列ができるだけのことはあるんだな・・とこの半生タイプのバラエティー豊かなクッキーの魅力に開眼した思いです。
クッキー人気に便乗したクルッキーの大人気
そして、このクッキー人気にあやかって登場したパリ・オリジナルの人気商品に、クルッキーというものがあります。クロワッサンとクッキーを合体させたもので、これはこれで、また別物として、世界に拡散され、今では、このクルッキーは、アメリカやロンドン、シンガポールなどにまで、そのレシピが広まっているそうです。この元祖クルッキーのお店はパリのメゾン・ルヴァールというブーランジェリー(ブラッスリーも併設している)なのですが、ここでは、1日に1,800個のクルッキーが売れるということなので、これまたスゴイ人気です。
このクルッキーはテイクアウトだと 1個 5.9ユーロ、ブラッスリー内で食べると1個 7.1ユーロとけっこうお高めですが、これほど売れるとは、なかなか侮れません。このお店では、他に、クッキー+ブラウニーのブルッキーなるものも置いていて、これもまたけっこう人気です。
しかしながら、クロワッサンだけでも少々、カロリー的には罪悪感を感じるところ、これにしっとりタイプのクッキーやチョコレートまでプラスされているとなると、なかなか別の意味でハードルが高い気がしますが、一応、わりと最近、世界的にまで広まった、パリ発祥のスイーツ?なるものを元祖本店で食べられるというのは、なかなか楽しい経験かもしれません。
いずれにしても、海外のものでも隔たりなしに受け入れ、美味しいものが入ってきて、パリらしいものに変化させていき、美味しいものが増えていくことは、何よりもうれしいことです。
著者プロフィール
- RIKAママ
フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。
ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」
Twitter:@OoieR