スペインあれこれつまみ食い
ブラボー日本!余裕みせてたスペインのW杯これまでとこれから
FIFAワールドカップカタール大会のグループステージが終了し、決勝トーナメントに進む16か国が決定しました。
日本が強豪ドイツ、スペインを下し「死の組」とも言われていたグループEを首位で突破することはおそらく多くの人にとって想定外の出来事だったのではないでしょうか。一方12月1日に行われた日本ースペイン戦は、余裕で通過すると思われていたスペインにとってはハラハラが止まらないゲームとなったことでしょう。私はサッカーに全く詳しくないので試合の分析やプレイに対するコメント等は控えますが、日本と同じグループEに所属するスペインに住んでいる身としてこちらの様子や反応を独断と偏見たっぷりでお伝えしたいと思います。
開幕当初 余裕たっぷりスペイン人
2010年南アフリカ大会で優勝経験もあるスペイン。今回のグループ予選はドイツという強豪がいながらも、余裕で決勝トーナメント進出は確実だろうと誰もが思っていたと思います。日本ではワールドカップが始まりドイツ戦に向けてサッカーが注目される中で、スペインは開会式の話題は上がったものの初戦のコスタリカ戦について「勝てるかどうか」などの話は周りで一切聞かれませんでした。全試合勝って当然、決勝トーナメントが始まってからワールドカップが始まる、くらいの気持ちだったのかもしれません。日本のドイツ戦前日「明日日本は絶対勝たなきゃいけない!」と意気込む私に「え、相手ドイツだよ。ドイツって強いんだよ笑」とドイツ勝利を確実視しているかのようなスペイン人友人からのコメント。その友人はどうやらドイツが勝つのは当然だと思って試合すら気にかけていなかったらしく、私が日本がドイツに勝利したことを告げると目をまん丸にして驚いていました。その後行われた初戦コスタリカ戦で7対0という大差をつけて勝利したスペイン。その時は日本戦で逆転負けするなんて夢にも思っていなかったでしょう。
Pure dominance from Spain. pic.twitter.com/mCZixgykpN
-- CBS Sports Golazo (@CBSSportsGolazo) November 23, 2022
若林源三だ!!!
ドイツ戦で好セーブを連発した権田選手にはスペインからも絶賛の声が上がっています。試合終了後、SNSにあげられた権田選手の渾身の4連続セーブの動画には「実写版ベンジだ!!」というコメントが相継ぎました。
ベンジは日本のアニメ「キャプテン翼」に出てくるキーパー若林源三のこと。スペインではキャプテン翼は「オリベル イ ベンジ(Oliver y Benji)」という名前で放送されており、青空翼はオリベル・アトム、若林源三はベンジ・プライスという名前で知られています。キャプテン翼はスペインでもとても人気なアニメのため知っている人も多く、権田選手の連続好セーブを見て真っ先にベンジ(若林源三)のことが頭に浮かんだのでしょう。
Portero de #Japón es comparado con #BenjiPrice de #Supercampeones tras victoria sobre #Alemania.
-- @TomatazosCom (@TomatazosCom) November 25, 2022
https://t.co/MYU1Edy03X
2点目は認めない
日本ースペイン戦の試合終了後、日本が決めた2点目についてスペイン側から多くの不満の声が上がりました。試合終了後、多くの友人が「おめでとう」と声をかけてくれた中で「でもあの2点目は明らかにライン出てたよね。」と言われることもあり、さらにツイッターのトレンドには「泥棒(Robo)」というワードが上がってくるほど。スポーツにおいて「泥棒」という言葉はズルをして勝利した時によく使われる言葉で、スペイン人が負けを認めていないことは明らかでした。SNSには横のアングルから撮られた写真が拡散され、「これは明らかに線から出ているじゃないか」「やっぱりFIFAは公平じゃない」と不満のコメントが殺到したのです。一夜明け、TikTokなどのSNSでルールの解説をする動画が回り始めたことで不満のコメントは減りましたが、「いや、あの写真は三笘選手の足に触れコート内に押し戻されている瞬間の写真であって、三笘選手が追いつく前にボールは完全にコートから出ていた!」と主張する、何がなんでも負けを認めたくないサポーターはまだ一定数いるようです。
El VAR dijo que no salió entera y...
-- MARCA (@marca) December 1, 2022
Estamos contra las cuerdas.#Qatar2022 #FIFAWorldCup pic.twitter.com/wnBpujjplv
モロッコ戦に向けて・・・
日本戦から日が経ち熱も冷め「ブラジルとあたらなくて済むから良かったじゃないか」とポジティブに考え始めたスペイン人ですが、決勝トーナメント初戦の相手はモロッコ。サポーターにとって勝敗はもちろん気になるポイントではありますが、実はもう一つ心配な点があるのです。スペインには78万人ものモロッコからの移民が住んでおり、移民問題や差別が以前から問題になっています。先月27日ベルギーとモロッコの試合の後、ブリュッセルでモロッコサポーターが暴動を起こしたことは記憶に新しいですが、それと同じことが勝敗に限らずスペインでも起こる可能性が否定できないのです。しかも試合がある6日はスペインは憲法記念日で祝日のため、16時という普段だったら皆仕事をしている時間帯でも多くの人が観戦するために街に繰り出すことが予想され、試合終了後に何らかの騒ぎが起こる可能性は否定できません。バルセロナ日本国総領事館は在バロセロナ邦人に向けて警告のメールを送るなど注意を呼びかけています。
興味ないスペイン人も・・・?
ワールドカップが始まる前、サッカー好きの知人に「ついにワールドカップだね!」と声をかけると「まぁそうだけど、ワールドカップはそこまで興味ないかな。スペイン代表の試合より世界から強豪が集まるリーガエスパニョーラの方が面白いよ」と素っ気ない返答が。5月にUEFAチャンピオンズリーグの決勝でマドリードのユニフォームを着てバーで大騒ぎしていた知人も今回日本がスペインに勝って良かったと言っていました。予想外の返事に驚きましたが2人の共通点はレアルマドリードのファンということ。スペイン代表の監督ルイス・エンリケ監督はバルセロナと深く関わりがある人物なので、マドリードファンの中には天敵バルセロナに関わっている人が指揮をとるチームは応援したくないという心境の人もいるそうなのです。面白いですね。
何もともあれ母国日本と居住国スペインの両国が同じグループに所属しながらも両方決勝トーナメントに進めたことは嬉しい限りです。日本とスペインの試合がもう一度観たいなぁ・・・と思ってしまうのは期待のしすぎでしょうか。まずは一勝、頑張れニッポン!!
著者プロフィール
- 松尾彩香
2015年スペイン巡礼(カミノデサンティアゴ)フランス人の道を完歩。スペイン語習得のために渡ったコロンビアでコーヒー農家になるもスペイン移住の夢が捨てられず、現在はコロンビアのコーヒー事業を継続しながらマドリードのベッドタウンでひっそりとスペインライフを満喫中。
Twitter: @maon_maon_maon