つい数ヶ月前まで「過去500年で最悪の干ばつ」と騒いでいたスペイン。しかし最近では毎日グズグズした天気が続き、もうここ１ヶ月以上はカラッとした晴れ空を見ていません。首都マドリード周辺では毎年10月から年末にかけて雨が多い時期にはなるのですが、12月初旬に発生した大型低気圧エフラインの影響を受けて記録的な大雨が続いており、国内各地で被害も出ているようです。

マドリードで街が浸水

首都マドリードでは12月14日午後、降り続いた雨の影響で街が冠水。マドリード中心部の道路は行き場を失った雨水でまるで川のようになり、車やバスの通行に大きな影響を与えました。さらに街に溢れた雨水は地下鉄にまで流れ込み、最低でも６つの路線の運行に支障を来したようです。特に被害が大きかったとされるバンコデエスパーニャ駅では、市民が撮影した雨水が階段を物凄い勢いで下っていく様子の動画や改札が完全に浸水している写真などがSNS上に投稿され、驚いたユーザーによって瞬く間に拡散されました。この日の14時半から19時半までの5時間の間に323件の浸水や倒木などの被害が報告されましたが、幸い怪我人などは出ていないようです。

エフラインによる死者も

この大型低気圧エフラインの影響で残念ながら1名の死者が出てしまっています。13日、カスティージャイレオン州のサラマンカという街で55歳の男性が増水した川に車ごと巻き込まれて行方不明になってしまいました。翌日男性が乗っていた車が下流で発見され、そのさらに１キロほど先で遺体が見つかったとのことです。川の増水は様々な自治体で確認されており、セゴビアでは川の水位が１メートル近く上がっているとの報告もあるほどで各地で注意が呼び掛けられています。

道路が陥没する地域も

ポルトガルとの国境に接するエストレマドゥーラ州は、今回の大型低気圧の影響を一番受けた地域だと言われています。この州では少なくとも5本の道路が雨で陥没するなどして通行止めになりました。川は氾濫し排水溝からも水が溢れ出すような状態で、どこから水が来ているのか全くわからなかったと住民は語っています。

N-523 entre Cáceres y Badajoz arrasada. A ver si con esto nos hacen autovía de una vez. @sextaNoticias pic.twitter.com/gmpGM1vxcG

-- EricWhite (@eric_cpc) December 13, 2022

同州バダホス県では1平方メートルあたり109.4リットルの雨量が記録され、浸水の被害を受けた住宅は翌日流れ込んだ泥水を掻き出す作業に追われました。地元メディアが行ったインタビューでは「全てが破壊されてしまった」「もう私たちには何も残っていない」と涙を流す住民たちの姿が映し出され、この低気圧が残した傷跡の大きさを物語っています。

Siguen achicando agua los compañeros de #SeguridadCiudadana en la localidad de La Roca de la Sierra #Badajoz, debido a las intensas lluvias caídas en las últimas horas. #Grandes #AllíDondeNosNecesites pic.twitter.com/BUfA3EvE8j

-- Guardia Civil (@guardiacivil) December 13, 2022

干ばつは解消したのか？

この夏、スペインをはじめとするヨーロッパ各地で干ばつが大きな問題となりました。その規模は過去500年最低と言われるほどで、スペインでは貯水ダムの水量が満タン時の30％を切ってしまうダムが続出し、生活用水の使用に制限がでた地域もあるほどでした。そんな中、この大型低気圧による記録的な大雨は各地で大きな被害を出した一方で、夏の水不足をカバーする恵みの雨にもなったようです。この降り続く雨のおかげで全国のダムの貯水量の平均は40％を越えるまでに回復。関係者からは安堵の声も聞かれました。しかし国内のダムが全て十分な貯水量になるにはまだ程遠く、専門家の中にはこの低気圧がもたらした雨と同様の雨があと2週間振り続かないと干ばつは解消されないだろうと指摘する人もいます。

水不足による干ばつから大雨による洪水まで、水にいろいろ悩まされた2022年のスペイン。「今年はおかしい」「こんな事今までなかった」の連続の１年でしたが、2023年は平年通り穏やかな１年が過ごせるのでしょうか。まさか今年のような異常気象が今後「平年通り」になってしまったりして・・・。