England Swings!
セーターが虫に食われた! 英国での虫よけに学ぶ
そのほか、高温のオーブンに衣類を1、2時間入れる殺虫法(燃えないのかな)や、部屋で煙を焚くタイプの殺虫剤(ゴキブリ駆除と同じですね)もあった。今回はどちらも試さなかったけれど、煙タイプはかなり効くらしいので、もし一度で退治できなかったら考えよう。
ところで、こちらで買った防虫剤はあのツンとした嫌な臭いがしない。自然の香りではないものの、ラベンダーをぎゅっと濃縮した感じだ。調べてみると、ナフタリンの使用は2008年に禁止されていた。もともと英国でもナフタリンを使っていて、同じような臭いのするモスボール(moth ball)という白い球状の防虫剤が一般的だったようだ。けれども特に3歳以下の子どもの健康への悪影響があるということで、EUの規則にしたがって今は禁止されていて使えない。英国がEUを離脱した今、今後どうなるかはわからないけれど(英語の記事ですが、ご興味ある方はこちらをどうぞ)。
駆除方法がわかったら、あとは実行するだけだ。と書くと簡単に聞こえるけれど、想像してみてください。衣類をすべて(すべて!)取り出してダメージを調べ、洗濯して干すかクリーニングに出すかして、たたんで、よく掃除したクローゼットに戻す。これだけでどんなに手間と時間がかかることか。そのほかにわが家にはカーペットも布張りのソファもあるし、クローゼットには寝具や布製スーツケースも入っている。
結局、わたしは大がかりな断捨離から始めなければならなかった。片付けが苦手なわたしがずっと先延ばしにしていたことだ。こんなところで突然、自分と向き合う羽目になるとは。逃げ場も時間もない。助けて。
それでなくても12月はあわただしい。英国最大のイベントとも言えるクリスマスが迫るこの時期、カードを書いてプレゼントをラッピングするだけでひと仕事だし、仲間との集まりやクリスマスイベントも増える。わが家には夫や夫の娘や孫の誕生日もあるし、今年はクリスマスまでに終わらせたい仕事が2件もある。モスよ、なぜ今なんだ!
こうして3週間近くかけて、なんとかひと通りの掃除と整理を終わらせた。その間、カードやラッピングペーパー、洗濯ものやクリーニング待ちの洋服、着物、寝具に整理箱、殺虫剤がすべての部屋に散乱しっぱなし。なんとか見つけたスペースでわたしはプレゼントを包み、仕事をし、あちこちに予定の変更をお願いし、夜中に泣きながら着物をたたんだ。謎の熱も出た(仕事はまだまだです。あああ)。
気の重いモス退治の間、友人知人の存在が大きな心の支えだった。モス被害に遭った人は経験談や知識を惜しみなく教えてくれたし、励ましてもくれた。被害にあった者同士、まるでモスを共通の敵にするように話が盛り上がった。被害の経験がなくても、ちょっと話を聞いてもらったり、全然違う話をしたりするだけで気が楽になった。「誰かと一緒にやったら? わたし行こうか?」と言ってくれた人もいた! ありがとう、ありがとう。
著者プロフィール
- ラッシャー貴子
ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。
ブログ:ロンドン 2人暮らし
Twitter:@lonlonsmile