England Swings!
11月を明るく照らす花火と焚き火、ガイフォークス・ナイト
今年のガイフォークス・ナイトは土曜日だったので、わが家でも近所の花火大会に行ってみた。ちょっとした参加費を払って教会の庭で開かれるもので、全部でたぶん200人くらいの小さな花火大会だ。
ネットで予約してQRコードがスマホに入っていたのに、受付のおじさんはプリントアウトしたリストに指を走らせて名前を見つけてくれた。飲食を扱うのは小さなテントひとつだけ。「効率よりも人とのコミュニケーション」がポリシーらしく、和やかに話しながらゆっくりオーダーを取ってくれた(スパイスを入れて温めたアップルジュースがおいしかった)。始まる前に牧師さんが「せっかくですから、地元の人たちとおしゃべりしてくださいね」とあいさつすると、誰かがすかさず、「(サッカーの)チェルシーファンの人いる? 友だちになろう!」と大きな声を張り上げて、場がさらに和んだ。教会の方々が手作りで運営している雰囲気といい、周りの反応といい、夏祭りというよりほのぼのした村祭りを連想してしまった。
とはいえ、イベントの準備はしっかりできていた。到着すると、「ファイヤー」という言葉が入った曲が次々に流れる中で焚き火が3つ、すでに炎をあげていた。花火が始まると、大人も子ども夢中で見物。英国の花火はどうやら量と勢いが勝負のようだ。威勢がいいので気持ちも高ぶる。だからお祝いによく使われるのだろうし、暗い気分もしばし忘れさせてくれる(気がする)。日本のようにひとつずつ愛でて、「たーまやー」と声を掛ける趣きが懐かしくもあるけれど、英国式もなかなかいい。この日は、花火自体は1時間ほどで終わり、レーザーも移動遊園地もなかったけれど、地元の人たちと豊かな時間をほのぼのと共有した満足感が残った。帰りには、牧師さんが出口に立って全員を見送ってくれた。
最後にちょっとつけ足すと、毎年ガイフォークス・ナイトの前後には、ディワリの花火も盛大にあがる。ディワリはヒンドゥー教の新年のお祝いで、インド系移民の多いこの国では、都市部を中心に各地で催される。別名「光のフェスティバル」とも呼ばれるこのお祝いでは、キャンドルや花火をよく使う。時期がたまたまガイフォークス・ナイトに近いけれど、ヒンドゥー暦によって毎年変わるので(今年は10月24日から5日間)、英国の空には11月5日前後の花火がますます増えるのだ。
このブログ記事をアップしようとしている今夜、すでにガイフォークス・ナイトから1週間経っているけれど、まだ遠くからぽんぽんと威勢のいい音が聞こえている。そしてガイフォークス・ナイトもハロウィーンも終わった先週からは、クリスマスのイルミネーションが本格的に始まった。やっぱり暗いときには、光るものがほしくなるんだなあ。
著者プロフィール
- ラッシャー貴子
ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。
ブログ:ロンドン 2人暮らし
Twitter:@lonlonsmile