England Swings!
サッカー女子EUROで初優勝、イングランド女子代表がくれた喜びと未来
サッカーの男女格差は実は教育の段階からある。FAの調査では、女子が男子と同じように体育でサッカーの授業が受けられる学校は63%、これが中学校では44%とさらに下がる。また才能のある男子は小学生の時から無料でアカデミー(養成所)に入ってプロを目指すことができるけれど、女子にはこのシステムがない。だから有料のレッスンに通えない家庭の女の子は、才能や希望があっても高度な指導やトレーニングは受けられない(男女平等にうるさいくらいだと感じるこの国でも、まだいろいろあるのだなあ)。
こうした問題については、FAが2020年から4年計画で改善を進めているところだ。学校にも働きかけて、すべての学校で女子のサッカーを授業に組み入れることを目指している。大会のテレビ解説をしていた元イングランド男子代表のイアン・ライトさんは、準決勝の試合後、「こんなに実力があるのに、女子に体育でサッカーをやらせないなんてどうかしている。今こそ変わる時だ」と熱く語って大歓迎を受けた。マスコミも「女子サッカーは変わらずにいられない」と目をひく見出しをつけて後押ししているし、ファンの間でも意識が高まっている。勢いづいたこの流れは、サッカーだけでなく女子スポーツ全体を改善する動きに広がりつつある(いいぞ、いいぞ!)。
大会決勝戦にはウェンブリー・スタジアムに87,192人が集まり、EURO史上、最多観客数を記録した。テレビ視聴1740万件という数も今年最高の視聴件数になった。女子サッカーは注目と人を集めた。
ライオネシスが初優勝の喜びを味わっていたスタジアムで、BBCの司会者ギャビー・ローガンさんが中継番組を締めくくった言葉がとてもよかったので、最後に抄訳をご紹介する。「イングランド女子の初優勝で最高に盛り上がっています。せっかくなので、このままにしないで女子の試合を見に行ってみませんか? ライオネシスはサッカーを連れて帰ってきてくれました*。これからここに留まらせるのはわたしたちの仕事ではないでしょうか。これで終わりではありません、これから始まるのです」
著者プロフィール
- ラッシャー貴子
ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。
ブログ:ロンドン 2人暮らし
Twitter:@lonlonsmile