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ラッシャー貴子|イギリス

コロナウィルスに感染、自宅で療養しました

 特徴的に思えたのは、症状が日によって変わったことだ。咳が出たかと思うと次の日にはすっかりおさまって、またその翌日に始まってみたり。微熱も味覚や嗅覚も日によって程度が違うように感じた。特に最初のうちは元気だったので、調子に乗って仕事もしていたけれど、あまりに体調が上がったり下がったりするので、後半は安静に努めた。静かに寝ていると、胸のあたりになんとなく炎症があるのが感じられた。

 感染したと話すと、友人、知人がいろいろな体験を教えてくれた。本人やその知り合いたちも含めた、40人分ぐらいの話をざっくりまとめると、やはりワクチン、特にブースターを打っていると、感染してもわたしくらいの軽症で済むことが多いように思う。政府も、重症化している人の多くはワクチン未接種だと発表している。もちろん個人差があることだし、あくまでわたしが受けた印象だ。

自宅での自主隔離

 先ほども言ったように、どんなに軽症でもコロナに感染したら自主隔離する必要がある。隔離中は家を出られないだけでなく、家族が陰性なら家の中でも決まった場所にこもることになる。寝室も食事も家族と場所を変えて、共有部分には行かない、バスルームを共有する時は家の中でもマスクをする。わが家も夫は感染していなかったので、わたしは寝室と小さな仕事部屋だけにこもり、食事はお盆に乗せてドアの外に置いてもらっていた。

 この自主隔離が思ったよりも辛かった。小さなフラット(集合住宅)の中で夫にうつさないように気を遣ったからだ。なんだか自分が空気中にウィルスをふりまいている気がして、部屋から出るのがとても怖かったし、バスルームに行く時は息をできるだけ止めたり、やたらに消毒をしたりと、なんだか気疲れしてしまったのだ。われながら真面目すぎる。ちょうどお正月だったので隔離に入る前におせちもどきの残りをあわてて冷凍庫に突っ込んだり、小さな家の中で電話しあったりと、おもしろい経験でもあったのに。その時には余裕がなかったんだな、残念。

 隔離の間は、わりとふつうに過ごしていた。部屋から出ないのは翻訳者のふだんの生活そのものなので、それ自体は苦痛ではなかった。前半は仕事もして、後半は本を読んだり眠ったりして過ごし、(楽しすぎて危険なので)ネットフリックスは部屋につながないようにした。楽しみは、家族や友人とのやりとりだった。ちょうど同じ時期に自主隔離していた友人と励まし合ったり、いろいろな人からお見舞いの言葉をもらったり、感染の経験を聞いたり。やさしさが身にしみた。噂を聞きつけたご近所さんが「代わりに買い物するよ!」と声をかけてくれたのも嬉しかったし、毎日ソファーに寝てくれた夫にも感謝。

 わたしが自主隔離していた1月初めには、2日連続で陰性が出たら、最短7日目で隔離を終われることになっていた。8日目、9日目に陰性が出たものの、ちょうどそのタイミングで咳がひどくなってしまったので、丸10日間、外出せずに隔離を終えた。

コロナ後散歩 - 1.jpeg

隔離が終わった翌日はよく晴れたので、10日ぶりに外に出て近くの緑地を散歩した。まだ咳が出たので、マスクをしたままだったけれど、外な空気も青空も気持ちがよかった。健康って幸せだ。カズオ・イシグロの『クララとお日さま』(土屋政雄訳)のような写真も撮れた。筆者撮影。

 現在は陽性診断から15日目。すっかり陰性になったが咳がまだ残っている。陽性だった時に元気すぎたせいか、今の方が咳はひどく感じられる。嗅覚は完全には戻っていないものの、アールグレイの香りが少し感じられるようになって喜んでいる(日常のささやかな楽しみがあるのは本当にありがたいことだ)。陰性になったらすぐに体調がよくなるものと思い込んでいて、後遺症の可能性もあることをすっかり忘れていたけれど、咳が長引くとか、味覚や嗅覚がなかなか戻らないとか、まさに同じような話をずいぶん聞いていたのだった。

 ただ、陽性診断から14日経つと人に感染させる確率は1%まで減るそうなので、とりあえず散歩くらいは出てもよさそうだ。咳が出るうちは人前に出るのは控えつつ、あとは自分の体調を整えていくつもりだ(今は薬局で勧められた液体の咳止めを飲んでいる)。後遺症とか、何か特徴的なことがあるようだったら、またご報告します!

 コロナはもう少し続きそうですが、みなさん、どうぞお気をつけてお過ごしくださいね。

コロナパズル - 1.jpeg

隔離中に夫が作っていた2つめのジグゾーパズル。陰性の夫は隔離する必要はなかったのだけど、仕事先にわたしのことを話したら1週間休むことになった。確かに、家にコロナ患者がいる人に会いたいとは思わないだろう。迷惑をかけて申し訳ないと思ったが、本人は楽しそうにパズルをしたり、本を読んだり、マーマレードを作ったりしていたので、別によかったみたいだ(1月はマーマレード作りの季節だ。いつもなら家中がオレンジの香りでいっぱいになるのに、それがわからないのも切なかった)。筆者撮影
 

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著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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