England Swings!
クリスマスプレゼントには何を選ぶ?
親しさや懐具合によるけれど、クリスマスプレゼントはそんなに高価でなくてもいい。本1冊だってじゅうぶん。プレゼント交換をする仲間うちでは予算を決める時もあって、他のプレゼントを選ぶ目安になる。前に通っていた、いけばな教室でもクリスマスにプレゼント交換があり、平均はどのくらい? と英国マダムたちに先生に詰め寄ったことがあった。敬愛していた日本人のその先生は、当時すでに在英40年という英国暮らしの大先輩。その時の「10ポンド(約1500円)ぐらいかしらねぇ」という先生の言葉は、この距離感ならそれくらいなのかと、とても参考になった。もう13、4年前の話なので、今なら15ポンド(約2300円)以上になるかもしれない。それでも意外に堅実なのだ。
子どもたちは、小さいうちはサンタに手紙を書いて欲しいものをお願いする。クリスマスイブの夜に、サンタへのプレゼントとしてミンスパイ(ドライフルーツやスパイスを混ぜたものを詰めた甘いパイ)とシェリーかポートワイン(か牛乳)を用意してからベッドに入る。トナカイ用のニンジンを添えることもあるようだ。朝になるとお願いしていたプレゼントが届いていて、お菓子やニンジンにはかじった跡がついている(パパやママのお仕事)。夫の娘のところではやっていなかったけれど、こんなかわいらしい習慣、お菓子をかじる役でいいから参加してみたかった。子どものいるクリスマスはやはり楽しい。娘の子どもたちが小さかった時には、大はしゃぎで包みを開ける孫たちを見るのが大好きだった。
本もクリスマスプレゼントとして人気が高い。好みをよく知らない人ならベストセラーや話題の料理本、趣味がわかれば専門的なものや好きそうなジャンルの本を選ぶ。今年は、わたしが日本語訳で読んでおもしろかったものの原書や、大好きだった本の続編などを選んだ。写真は手前左がResurrection Science: Conservation, De-extinction and the Precarious Future of Wild Things(『絶滅できない動物たち 自然と科学の間で繰り広げられる大いなるジレンマ』 M.R. オコナー著、大下英津子訳)、右は10 Minutes 38 Seconds in This Strange World(『レイラの最後の10分38秒』エリフ・シャファク著、北川絵里子訳)、奥の青と白の表紙は、『木曜殺人クラブ』(リチャード・オスマン著、羽田詩津子訳)の続編、The Man Who Died Twice。筆者撮影
クリスマスプレゼントには、やはりサンタやクリスマスツリーなどクリスマスっぽい柄のアイテムが人気だ。お手頃なのはマグカップ、手袋やニット帽、Tシャツ、イヤリング、クリスマスバージョンのクリーム、クリスマスのお菓子など。当日を過ぎてトナカイ柄のセーターを着ているのは間が抜けている気もするけれど、クリスマスの飾りつけは1月6日の顕現日(クリスマスから12日めで、東方の三博士がキリストを訪れたとされる日)まで続くことだし、クリスマスの名残りとして、それもありのようだ。
季節がら、あたたかくなれるものも人気がある。セーターやマフラーのほかにキャンドル、もこもこした室内ばき、厚手のパジャマ、お風呂まわりのもの、湯たんぽなど。ええ、湯たんぽ。冬はベッドに湯たんぽを入れるという話を日本よりもずっとよく聞く。ヒョウ柄やふわふわのカバーがついた湯たんぽは、プレゼントとしてもかわいらしい。
前にいただいたキュートな湯たんぽ。こちらで見る湯たんぽはたいていこの形をしていて、中にゴム製の本体が入っている。カバーには動物の柄、マンガ風な絵がついたもの、ブランドものなど、意外にバラエティーがあっておもしろい。筆者撮影
「あたたかい」に分類されるかどうか微妙だけれど、くつ下もクリスマスには人気が高い。くつ下なんて子どもだましかと思うでしょう? でも本当にとても多い。しかもサンタとか首相の似顔絵とかアニメの主人公という笑えるデザインも意外によく選ばれる。値段も手頃で大して場所もとらないから、少しぐらい変わっていても笑って許せるのかもしれない。選択肢の多い女性に比べて、男性へのちょっとしたプレゼントは意外と難しいものだし。
おもしろくつ下なら「ジョークもの」の分類に入りそうだ。ほかに思いつくジョークものは、へんてこな絵やジョークが描かれたTシャツ、フランスパンの形をしたボールペン、おもちゃのように小さい掃除機、瓶の先に取り付けてワインを実質ラッパ飲みするグラスなど。日本でいうと、昔「王様のアイディア」で売っていたようなもの、今は東急ハンズで見て笑うようなものだ。(「王様のアイディア」はアイディア商品を販売していたチェーン店で、ツボ押しつき健康湯のみとか、たいやきのカバーつきカイロとか、おもしろグッズも多かった。現在は閉店とのことで、とても残念)
著者プロフィール
- ラッシャー貴子
ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。
ブログ:ロンドン 2人暮らし
Twitter:@lonlonsmile