England Swings!
バースの街で紳士淑女の社交を追体験、ジェイン・オースティン・フェスティバル
翌日の土曜は朝からまぶしい秋晴れ。会場に向かってぶらぶら歩き始めると、着飾った人たちがすでにあちこちを歩いていて、街全体がなんとなくお祭りムードだった。パレード出発地点近くの、古い建物が立ち並ぶ広い通り沿いで待っていると、太鼓の音とともに着飾った人たちが近づいてきた。そのみなさんの笑顔の、まあ晴れやかなこと!
参加者は女性が多いものの、男性も嬉しそうに歩いていた。紳士、軍人、牧師と職業のバリエーションが多い分、男性の方が実は衣装の選びがいがあるのかもしれない。大人だけでなく、子どもや赤ちゃん、同性カップル、車椅子で参加の人や軍服を着た犬などなど、とにかくみなさん青空の下でごきげんだった。目が合うとにっこり微笑んでくれるし、カメラに向かってポーズをとってくれる人も多かった。中には帽子を軽く持ち上げてグッドモーニングと言ってくれる「紳士」も。参加者の「嬉しい」というオーラがバースの街にあふれているようだった。
衣装からアクセサリーまでばっちり決めた紳士がいるかと思えば、ドレス姿に今の時代のリュックを背負ったり、スーパーの買い物袋を下げたりしているレディーもいて、楽しみ方は人それぞれ。自分が楽しければよし、というのも英国らしい。
楽しそうな人たちにつられて、自然な流れで30分ほど一行と並んで歩いていると、どこからともなく「参加した方が楽しいんじゃない?」という気持ちが湧き上がってきた。小説や映画の中で長い間ずっと想像していたオースティンの世界を自分で体験できるのだから、嬉しくないはずがない。友人たちも同じだったようで、裁縫が得意な友人などは途中から、「ああいう形はわりと簡単に作れそう」と品定めを始めた。これは、もしかしたら来年、わたしたちは本当にロングドレスを着てパレードに参加しているかもしれない。
パレード解散後、参加者たちは街に散ったので、その後あちこちで見かけることになった。大人数が集まる行進も見ごたえがあったけれど、意外なところでドレス姿に出くわすと、まさに映画のひとこま、あるいは本当にタイムスリップしてしまった よう。そんな気分を味わえるのも、背景の古い建物が雰囲気を出してくれるからだろう。
わたしは初めの2日しか滞在しなかったが、フェスティバル自体は10日間続いた。ロンドンに戻った後もフェスティバルの公式インスタグラムをチェックしていたら、その後も盛り上がったようだった。当時のダンスを踊る舞踏会(練習するクラスもあり)ではみんな楽しそうに手をつないだり跳ねたりしていたし、ローマの浴場跡での仮面舞踏会なんていうイベントも魅力的。うーん、やっぱり参加してみたくなる。
著者プロフィール
- ラッシャー貴子
ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。
ブログ:ロンドン 2人暮らし
Twitter:@lonlonsmile