Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
女王陛下とオーストラリア、「追悼の日」で巷が混乱した理由
2022年9月8日(英国時間)、スコットランドのバルモラル城で静養していたエリザベス女王が死去した。19日には、ロンドンのウェストミンスター寺院で国葬が執り行われたが、世界の王族や要人らが出席した荘厳な式典の様子をテレビのライブ中継でご覧になった方も多いことだろう。
オーストラリア女王でもあった故エリザベス2世
英国の女王エリザベス2世は、オーストラリアの女王でもあるため、オーストラリアの紙幣やコインにも女王の肖像が使われている。
女王とオーストラリア...女王は英国の女王であるだけでなく、オーストラリアの女王でもある。
-- Miki Hirano (@mikihirano) September 11, 2022
"The Queen's relationship to Australia is unique. In all her duties, she speaks and acts as Queen of Australia, and not as Queen of the United Kingdom."https://t.co/bjdftoxMe4
オーストラリアという国は、実質上、独立した連邦国家となっているが、形式上は今もまだ、英国の王または女王を元首とする立憲君主制による議会制民主主義をとっている。ただし、この国においては、「オーストラリア女王」となるのだそうだ。(参照)
このような特殊な事情の中、いろいろと根深い問題を抱えてはいるものの、豪国内主要新聞各紙の一面は女王の訃報で埋め尽くされ、各地の公館には今も追悼の意を表す半旗が掲げられている。
エリザベスⅡ女王への追悼が一面を飾るオーストラリアの新聞各紙
-- Miki Hirano (@mikihirano) September 11, 2022
Queen's death: Australian newspapers front pages https://t.co/lSXOPwNBNm
女王の訃報を受けて決定した突然の公休日で巷は混乱
女王の死は、普段はほとんど意識することのない君主の存在をあらためて認識させられることになった。
アルバニージー豪首相は、女王逝去の報を受けた数日後の9月11日(豪国時間)、急遽、9月22日を「全国 女王陛下追悼の日 National Day of Mourning for Her Majesty The Queen」とし、公休日にすると国民へ向けてアナウンス。オーストラリア女王が亡くなったのだから、当然のことなのだろう。ところが、あまりに急な決定だったために、国内各所で混乱が生じてしまった。
On September 22 there will be a public holiday for the National Day of Mourning for Her Majesty The Queen.
-- Anthony Albanese (@AlboMP) September 10, 2022
例えば、とても身近なところでの『混乱』をあげてみるとこんな感じだ。
本来なら22日は平日の木曜日。この日にレストランを予約していたとする。予約した時は平日として予約したはずが、突然、祝祭日と同様の公休日となったことで、「Public holiday surcharge(休日追加料金)」と呼ばれる追加料金が発生することに...
実は、オーストラリアでは、日曜日や祝祭日に従業員を勤務させる場合、雇用主は時間当たりの賃金を通常の2~2.5倍支払わなければならない。このため、通常のメニュー価格に加え、10~15%のPublic holiday surchargeを加算して請求するのが通例となっている。(参照)
こうしたことから、この日にレストランを予約していた人たちは、通常料金に加え、想定外の追加料金を余分に支払わなければならなくなってしまうため、多くのレストランで問い合わせやキャンセルが相次いだという。しかも、特殊な事情で急に休日となったために発生する Public holiday surchargeを「(店側が)常識の範囲で処理するように」というお達しがでたために、店側も混乱。「一体どうすればいいのか...」と頭を抱えてしまったらしい。
私自身も、まさにこの日にバー&レストランでのランチ・ミーティングが入っていたのだが、急遽、ミーティングのスケジュールを変更せざるをえなくなったと連絡があり、結局、10月にずれることになった。
エリザベス女王逝去に伴い、オーストラリアでは急遽22日が追悼のため公休日とすることになったために各方面で混乱してるらしいけど、私もちょうどその日にビクトリア州のランチミーティングに呼ばれていたけど、これまた急遽日程をずらすことになりそうだと連絡が。。。
-- Miki Hirano (@mikihirano) September 14, 2022
こうしたランチ・ミーティングのように企業が計画する会食の場合はとくに、想定外の経費が発生すると予算オーバーとなってしまうため、深刻な問題なのだろう。
また、一般小売店でも、この日に従業員を勤務させると賃金を多く支払わなければならなくなるため、そこまでして店を開けることもないと、急遽、お休みにするところもあったそうだ。
そんな、てんやわいやの騒ぎはさておき、突然の休日となった22日の「女王陛下追悼の日」には、豪国内各地で追悼の会が開かれ、多くの市民が祈りを捧げたという。(参照)
The Queen died peacefully at Balmoral this afternoon.
-- The Royal Family (@RoyalFamily) September 8, 2022
The King and The Queen Consort will remain at Balmoral this evening and will return to London tomorrow. pic.twitter.com/VfxpXro22W
父ジョージ6世が早世し、25歳という若さで即位した女王エリザベス2世。在位70年間と、英国史上最も長く務めた君主でもあった。長い間、お疲れさまでした。どうぞ安らかに。〈了〉
著者プロフィール
- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/
メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/