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Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア

平野美紀|オーストラリア

無人ドローン宅配、カラスに襲撃されて一時撤退へ

交通渋滞もなく、ゼロ・エミッションで、いいことづくめのように言われるドローン宅配に思わぬ敵が・・・※画像はイメージです。(Credit:Bestgreenscreen-iStock)

日本でも2022年中に予定されている解禁に向けて、準備が着々と進んでいるという、小型無人飛行機「ドローン」を使った完全無人宅配。

オーストラリアでは既に、Googleの親会社であるアルファベット傘下のウィング社が、首都キャンベラとクイーンズランド州ロガンの2都市で、大規模なトライアル営業を始めている。

ウィング社は今年8月に、テスト飛行を含めた10万回配達を達成し、事業が順調に進んでいることを祝ったばかりだったが・・・9月半ばにとんでもない『邪魔』が入り、一時中断を余儀なくされてしまった。

キャンベラで配送中のドローンが、大型のカラスに襲われたのだ。

ロックダウン中のキャンベラで急増したドローン宅配

キャンベラでのドローン宅配は、主にカフェやパン屋、雑貨店、薬局、文具店などの小規模のデリバリー・サービスで、約1.2 kgまでのものを数分以内に届けられるというのがウリだ。

キャンベラでは、新型コロナウイルス感染が拡大し、折しもロックダウンの真っただ中であったことから、移動制限などで行きたくても行けないちょっと離れたカフェからコーヒーや朝食のデリバリーをオーダーする人が増えていた。

事件が起きた日、キャンベラ住民のベン・ロバーツさんは、お気に入りカフェからコーヒーのデリバリーを頼み、自宅上空までやってきたドローンの音に気づいて、持っていたスマートフォンで動画を撮影していたところ、ドローンが大型のカラスに攻撃される瞬間を目撃してしまった。

その時の動画がこれだ。

映像には、ロバーツさんの自宅上空に到着し、デリバリーボックスを置こうと高度を少し下げ始めた時、黒い物体が飛んできて、ドローン目掛けて急襲。ホバリングしているドローンを足で捕まえて、左右にグワングワンと振り回し、落下しそうになっているのがバッチリ撮影されている。

ドローンを襲ったのは、オーストラリアン・レイヴンと呼ばれる、日本のカラスと同サイズ並み(ハシブトガラスよりは若干小さめ、ハシボソガラスとほぼ同じくらい?)の大型のカラス属の鳥。和名は、ミナミワタリガラスという。

春から夏にかけてのこの時期、レイヴンをはじめとするカラス属の鳥たちにとっては営巣シーズンでもある。巣を作り、子育てをするために、自分のテリトリーに入ってきた生き物を敵とみなし、攻撃する習性があるが、まさかドローンが襲われるとは...

ドローンがレイヴンに襲われたこの地区では、営巣・子育てシーズンが終わり、安全が確認されるまでの当面の間、ドローン宅配を一時撤退することになった。

人間をも襲うカラス属の習性

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ドローンを襲った大型のカラス属の鳥「オーストラリアン・レイヴン」。(Credit:tracielouise-iStock)

レイヴンは、自分の倍以上もあるオナガイヌワシを襲うことが確認されているが、他のカラス属の鳥もまた、自分より何倍も大きな生き物であっても襲う習性があることで知られている。

やはり営巣シーズンになると、住宅地の街路樹や隣接地に巣をつくることも多い中型の「マグパイ(和名:カササギフエガラス)」が人間を襲い、毎年、地元住民との間で問題になっている。

今年8月にも、クイーンズランド州でマグパイの攻撃に遇い、追い払おうとした際に転倒し、投げ出されてしまった赤ちゃんが死亡するという、痛ましい事故が起きた。(参照

大抵の場合、人間が襲われるのは、自転車やキックボード、スケートボード、ベビーカーなどで、勢いよくスーッと動いている時だという。また、サイクリストが被っているヘルメットが、奇妙な生き物に見えるのではないかという説もあるが、襲われないためには、営巣シーズンになったら、できるだけその場所に近づかないことだ。速く通り過ぎようとスピードアップすることで、余計に攻撃されかねない。

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サイクリストを目掛けて、急降下してくるマグパイ(カササギフエガラス)。(Credit:Patrick Cooper-iStock)

カラス属の鳥たちには、大きさや形態に関係なく、子育て中に自分のテリトリーに入ってくる『動くもの』は許さない!という強い意志があるようだ。飛行中のドローンが襲われた今回の事件もまた、人間が野鳥のテリトリーに侵入したことから起きたといえるが、人間と野生の生き物との共存は、なかなか難しい。

また、人間同士であっても価値観の違いから、揉め事になり、争いに発展することもある。キャンベラでは、ドローン宅配による住宅街の騒音が予想を上回っているという調査結果もでてきており、利用者と騒音被害を訴える住民との間に亀裂を生んでいるという。

最新テクノロジーの利用は、便利な反面、まだまだクリアしなければならない様々な問題を抱えている。自然との兼ね合いなど、どのへんで折り合いをつけるのがいいのだろうか...〈了〉

 

Profile

著者プロフィール
平野美紀

6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。

Twitter:@mikihirano

個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/

メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/

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