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Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア

平野美紀|オーストラリア

世界最古の熱帯雨林に棲む『恐竜の生き残り』に会いに、密林の隠れ家へ

恐竜時代の生き残り、「生きている恐竜」と言われる生き物たち

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デインツリー国立公園内には、あちこちに「カソワリーに注意」の道路標識が立っている。(2021年5月 撮影 PHOTOGRAPH BY MASAHIRO HIRANO)

世界最古の熱帯雨林には、「生きている恐竜 Living Dinosaur」や「ジュラ紀の遺物 Jurassic relictual species」などと呼ばれる生き物が何種もいる。それらはすべて、この森にしか生息していない希少な固有種だ。

なかでも、興味をそそられるのが、冒頭の「何度も挑戦して、ようやくチラ見できた」生き物・・・日本名では「火喰鳥(ヒクイドリ)」と呼ばれる、世界で3番目に大きな飛べない巨鳥「カソワリー」だ。

かつて、オーストラリアが 東ゴンドワナ大陸の一部だった時代から生き続けていると言われ、2017年に中国で発見された新種の恐竜コリソラプトル(Corythoraptor jacobsi)の化石から描きだされた姿(上図)は、まさに、このカソワリーを彷彿とさせる。(参考

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上/オーストラリア北東部の熱帯雨林にのみ生息するヒクイドリ『サザンカソワリー』。足が速く、破壊的なキック力を持ち、「世界で最も危険な鳥」と言われ、体高は平均1.7メートル、最大2メートルにもなる。下/親鳥と幼鳥。カソワリーは雄が子育てをする。(2021年5月 撮影 PHOTOGRAPH BY MASAHIRO HIRANO)

オーストラリアに生息するカソワリーは、「サザンカソワリー」と呼ばれ、熱帯雨林を歩き回って果実や木の実を食べ、その種を糞と共に排出して、森を育てる重要な役割を果たしている。

こうして太古の森と共存し、生き抜いてきた古代の巨鳥は、(野生下では)クイーンズランド州北部の湿潤熱帯地域でしか見られない。なかでも、デインツリー国立公園は遭遇率が高く、かのナショナル・ジオグラフィック誌のカメラマンもこの地区に張り込んで、撮影したくらいなのだ。(参照

密林の隠れ家からカソワリー探索へ

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こんな辺鄙なところに、こんな素敵な宿が!?と、思わず感嘆の声をあげてしまうほど、ラグジュアリーな隠れ宿「コッカトゥー・ヒル・リトリート」。(2021年5月 撮影 PHOTOGRAPH BY MASAHIRO HIRANO)

そこで、今回は、ジュラシック・パークのようなデインツリーの密林が目の前に広がり、文明から隔絶された世界に浸ることができる隠れ家を起点に、世界最古の熱帯雨林とカソワリー探索に出かけようというわけだ。

ケープ・トリビュレーションへと続くメインの舗装路を外れ、土埃を巻き上げながら砂利道へと入る。ハンドル操作を誤れば、タイヤが空回りして前へ進むことができなくなりそうな急なグラベルロードを一気に上がり、下りに差し掛かったところで、ようやく宿に到着か?と思いきや、目の前に現れたのは、幅4メートルほどの川。川底はコンクリートで上げ底にしてあるから浅瀬ではあるけれど、車高の低い車だったら肝を冷やすところだ。

川を越え、さらなる急坂を一気駆け上がると、密林に囲まれた山の頂上に、目指す『隠れ家(コッカトゥー・ヒル・リトリート)』があった。

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左/コテージからは熱帯雨林が一望できる。右上/客室はわずか4つのコテージのみ。右下/敷地内にはこの地域のネイティブ植物がカラフルな花を咲かせ、蝶や鳥たちの楽園でもある。(2021年5月 撮影 PHOTOGRAPH BY MASAHIRO HIRANO)

宿主のカルメンさんと初めて会ったのは15年ほど前か。彼女が最近ここで撮ったというカソワリーの写真を見せてくれた。期待に胸を膨らませながら、今晩の寝床となる戸建てのコテージへと案内してもらう。

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左/コテージのデッキから見える海へは車で10分ほど。ただし、ワ二注意...(2021年5月 撮影 PHOTOGRAPH BY MASAHIRO HIRANO)右/コッカトゥー・ヒル・リトリート周辺で子育てをしていたカソワリーが落ちた果実を食べる決定的瞬間。(カルメンさん撮影の画像を筆者がiPhoneにて撮影)

コテージのデッキから見えるのは、緑、緑、緑.........目が痛くなるほどの緑の洪水。ジュラ紀にさ迷い込んでしまったかと思うような鬱蒼とした密林が、どこまでも広がっていた。遥か遠くには、青い海がきらきらと輝いている。

太古の時代、地球はこんな感じだったのだろうか...と思わざるを得ない壮大な景色───

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密林の隠れ家「コッカトゥー・ヒル・リトリート」のデッキから見える太古の熱帯雨林。(2021年5月 撮影 PHOTOGRAPH BY MASAHIRO HIRANO)

人工物は一切見えない。

この地区には、電気も水道も通っていない。携帯のシグナルだって驚くほど弱い。現代の世の中で、最低限の『社会インフラ』と呼ばれるものは、ほとんど整っていない。川と森によって阻まれたこの場所は、便利な文明社会に慣れた人間が暮らすには、最悪の環境なのだ。

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デインツリー国立公園の南側セクション「モスマン・ゴージ」では、この森で暮らしてきた先住民の人々が受けついできた文化を伝えるツアーも人気だ。(2021年5月 撮影 PHOTOGRAPH BY MASAHIRO HIRANO)

何千年も前からこの地で暮らす先住民の人々は、この森と共存してきた。その教えが今も伝わるこの地で、新たに暮らす人々もまた、原始の森を壊さないよう努めている。コッカトゥー・ヒル・リトリートを含め、この地区の住民は、自家発電や雨水を利用するなどしながら、可能な限り環境に負荷をかけない暮らしをしている。

不便だけれど、徹底したその暮らしぶりは、以前書いたコラム「世界遺産の豊かな森と共存する住民たち」をお読みいただければと思う。

日が落ち、静まり返った森には、虫や夜行性の生き物たちの声だけがこだまする。上を見上げれば満天の星空。これを『極楽』と言わずして、なんというのだろう...

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地元で採れるトロピカル・フルーツやオーガニック・ヨーグルトなどでヘルシーな朝食を。(2021年5月 撮影 PHOTOGRAPH BY MASAHIRO HIRANO)

虫たちのコーラスをBGMに眠りにつく贅沢な一夜が明けたら、トロピカル・フルーツ満載の朝食でお腹を満たして、待望のカソワリー探索へ出発するとしよう。

これだから、オーストラリアはやめられないのだ(笑)

【関連リンク】
世界最古の熱帯雨林 ~地球に残された特別な森林(日本語):Tourism Tropical North Queensland(ケアンズ観光局)
ヒクイドリのように大きなトサカを持つ新種のオヴィラプトロサウルス類恐竜を発見・命名:北海道大学による日本語リリース

※デインツリー、ケープ・トリビュレーション地区について、以前書いたコラムもどうぞ。
ケープ・トリビュレーション ―世界最古の熱帯雨林に大自然のパワーをもらう、ケアンズからの小旅行 
世界遺産の豊かな森と共存する住民たち

Special thanks to:Tourism Tropical North Queensland, Tourism and Event Queensland, Cockatoo Hill Retreat, Daintree Discovery Centre, Mossman Gorge Centre, Daintree River Cruise Centre

 

Profile

著者プロフィール
平野美紀

6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。

Twitter:@mikihirano

個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/

メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/

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