コラム

30年以上の時を経ていま明かされる、ディストピアSF『侍女の物語』の謎

2019年10月24日(木)16時40分

この小説の3人の女性を通じてアトウッドが教えてくれるのは、民主主義や人権がいかに脆弱なものかということだ。

ツイッターなどのソーシャルメディアに流れてくる日本人の意見のなかには、民主主義や人権への敵意を感じるものが少なくない。

彼らは、それらが「自分ではない者(特に女性や子供)を優遇し、自分の権利を奪うわがまま」だと感じているようだが、そういった人には、短期間でいいから「民主主義と人権」を取り去ったギレアデへの留学をおすすめしたい。

ただし、司令官の職はお約束できない。それよりも、たぶん女性とのセックスも許されない(すると処刑される)使い捨て兵士か、有色人種だから強制収容所送りになりそうだ。また、いったん入ったら二度と出ることができない点がやや問題かもしれないが、民主主義や人権に敵意を覚える人にとってはさほど大きな問題ではないだろう。


プロフィール

渡辺由佳里

Yukari Watanabe <Twitter Address https://twitter.com/YukariWatanabe
アメリカ・ボストン在住のエッセイスト、翻訳家。兵庫県生まれ。外資系企業勤務などを経て95年にアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。近著に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)がある。

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