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ネットビリオネアが牽引する21世紀の宇宙探検
宇宙開発競争のライバルだったソビエト連邦に大勝利したことにアメリカ国民は歓喜し、満足した。だが、それと同時に月や宇宙探索への情熱も失った。月に行けないソビエト連邦などはもはやライバルではない。ライバルを失ったことでアメリカ国民は宇宙計画への興味を失い、NASAの予算は削減され、当初予定されていたアポロ18、19、20号はキャンセルされた。NASAに与えられる資金は急速に減り、1990年代にはすでに国家予算の0.5%以下になっていた。
家族全員が1台の小さな白黒テレビの前に集まってニール・アームストロングが月に降り立つのを見た時代とは異なり、2020 年を目前にした現在は情報や娯楽の選択肢に限りがない。この時代に、宇宙への有人ミッションに関して60年代の宇宙開発競争に匹敵する興奮を国民に与えることはできない。これまでもそうだったが、今後も国家予算から大金を得るのが容易になるとは思えない。
月面を歩いたアポロ宇宙飛行士たちが高齢化し、アメリカが壮大な夢を忘れそうになっているときに宇宙の夢を引き継ぐ決意をした者がいる。1990年代から2000年代にかけてのインターネットブームで大金を手にしたビリオネアたちだ。
主要な立役者は、昨年10月にビル・ゲイツを抜いて世界一の富豪になったアマゾン創業者のジェフ・ベゾス、テスラCEOのイーロン・マスク、マイクロソフト社の共同創業者ポール・アレン、ヴァージン・グループ創設者のリチャード・ブランソンだ。
彼らビリオネアによる宇宙ビジネスについて詳しく解説するノンフィクションが、今年3月に2冊同時に発売された。
『スペース・バロンズ(The Space Barons)』の著者はワシントン・ポスト紙で宇宙事業や防衛事業を専門とする記者のクリスチャン・ダベンポートで、『ロケット・ビリオネアズ(Rocket Billionaires)』の著者は新進のビジネスメディア「クオーツ」の記者であるティム・ファーンホーズだ。
どちらの本もマスクとベゾスの競争に焦点を当てており、読み応えがある。そのうえで、私は『スペース・バロンズ』のほうが人間ドラマを感じて入り込みやすいと感じた。
『ロケット・ビリオネアズ』のファーンホーズもマスクに取材するなど徹底しているが、ベゾスから率直な意見を聞き出したダベンポートのほうにより大きな価値を感じる。というのは、オープンなマスクとは違って、ベゾスは自分のプライバシーを徹底的に保護する秘密主義だからだ。ダベンポートはベゾスが所有するワシントン・ポストの記者だが、その有利な立場でも取材許可を得るのには時間と努力を要したようだ。また、ダベンポートの語り口は、筆者たちの世代が忘れかけていた夢を思い出させてくれた。
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