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輝かしい未来を末期がんで奪われた若き脳外科医の苦悩
それを彼はこう表現している。
患者の命とアイデンティティは(医師である)私たちの手に委ねられている。だが、死は必ず勝つ。自分自身が完璧であっても、現実はそうではない。(致命的な病にかかった患者を治療するときの)コツは、すでに負けが決まった不利なトランプのカードを渡されていることを自覚することだ。判断も決断も間違うことがあることも。それでも、私たちは患者のために勝とうとする。絶対に完璧を手に入れることはできない。そう知りつつも、そこに向かって永久に漸近線で近づきつつあるのだと信じることはできる。
だが、もっと後で来ると思い込んでいた自分の死が目前に迫っていることを知ったKalanithiのショックは、その叡智で静かに対応できるものではなかった。
病院のベッドに横たわったままCTスキャンで肺がんが多臓器に転移しているのを確認したkalanithiの妻への言葉は、「死にたくない」だった。
アメリカでは、牧師などが心理的なケアを施すパストラルケアという制度がある。致命的な疾患をかかえた「迷える羊」のような患者が人生の大きな転換をするのを導くケアだ。だが、その導き手ではなく、羊として、迷い、混乱している自分にKalanithiは気づく。
「将来の可能性」を積み上げていくのがこれまでの自分の人生だったのに、その「可能性」はもうないのだ。これまで、数限りない努力をし、計画をしてきたのに、目標に手が届きそうになったいま、それを失うのだ。
その心境をKalanithiはこう書いた。
注意深く計画し、苦労して達成した将来は、もはや存在しない。仕事で馴染み深くなった「死」から、じきじきに訪問を受けたのだ。ついに、面と向かって顔を見合わせたわけだが、見覚えがあることはなにもない。何年にもわたって数えきれないほどの患者を治療してきたのだから、岐路に立ったら彼らのたどった道がはっきり見え、その後を続けばいいはずだ。それなのに、自分に見えるのは、空虚で苛酷で、からっぽで、ギラギラ照り返す真っ白な砂漠だけ。まるで、砂嵐が馴染みのある足跡をすべて拭い去ってしまったかのように。
このとき、彼は、二度と脳外科医として仕事に戻ることはないだろうと思った。
しかし、Kalanithiの主治医になった腫瘍専門の女医Emmaは、脳外科医の同業者が想像したような対応はしなかった。
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