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遺伝性難病が発覚した家族のそれぞれの選択
Lisaがこの小説を通じて読者に問いかけたのは、医療における「個人の選択」のジレンマだ。
予防対策がある疾病とは異なり、ハンチントン病の場合には、遺伝していることが分かっても何の対策もできない。それならば知らないで生きているほうが楽なのだが、親が診断を受けてしまったら、子供はもう「知らないで気楽に生きる」ことは選べない。だからアメリカでは遺伝子の検査をする前にカウンセリングをするのだ。検査を受けるか受けないか、本書の4人の子どもたちはそれぞれ異なった決断を下すが、そこにも現実感がある。
ハッピーエンドはもちろん期待できないが、それでも読後感は良い。なぜなら、人間は誰しもいつか死ぬ運命なのだし、それまでの時間の過ごし方は、たとえ選択肢が少なくても選ぶことができるのだから。そう気付かせてくれる優れた小説だ。
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