コラム

遺伝性難病が発覚した家族のそれぞれの選択

2015年10月14日(水)18時00分

 Lisaがこの小説を通じて読者に問いかけたのは、医療における「個人の選択」のジレンマだ。

 予防対策がある疾病とは異なり、ハンチントン病の場合には、遺伝していることが分かっても何の対策もできない。それならば知らないで生きているほうが楽なのだが、親が診断を受けてしまったら、子供はもう「知らないで気楽に生きる」ことは選べない。だからアメリカでは遺伝子の検査をする前にカウンセリングをするのだ。検査を受けるか受けないか、本書の4人の子どもたちはそれぞれ異なった決断を下すが、そこにも現実感がある。

 ハッピーエンドはもちろん期待できないが、それでも読後感は良い。なぜなら、人間は誰しもいつか死ぬ運命なのだし、それまでの時間の過ごし方は、たとえ選択肢が少なくても選ぶことができるのだから。そう気付かせてくれる優れた小説だ。

プロフィール

渡辺由佳里

Yukari Watanabe <Twitter Address https://twitter.com/YukariWatanabe
アメリカ・ボストン在住のエッセイスト、翻訳家。兵庫県生まれ。外資系企業勤務などを経て95年にアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。近著に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)がある。

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