コラム

日本では起こりえなかった「交渉の決裂」...言葉に宿る責任感とは?

2025年03月21日(金)18時00分
ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)
商談で握手するビジネスマン

geralt-pixabay

<ゼレンスキー大統領とトランプ大統領の会談のような決裂が、日本では想定しづらいと駐日ジョージア大使が考える理由について>

先日、ウクライナのゼレンスキー大統領とアメリカのトランプ大統領の会談が決裂に終わったことが世界中に波紋を呼んだ。

しかし、日本ではこのような事態は考えにくいであろうとも思っている。というのも、日本では「言葉の重み」が非常に重視されているからだ。


私が早稲田大学卒業後に新卒社員として入社したのは、日本の伝統的な企業であるキッコーマンだった。入社後、営業部門に配属されたのだが、特に印象深かったのが大手スーパーのバイヤーとの商談であった。

大規模会場で行われた商談の場には各社の営業担当者が一堂に会し、各部門のバイヤーに企画を提案していく。新人の私だけでなく、先輩社員も緊張感を漂わせるなか、新入社員の私を軽く紹介した後、企画書1枚を提示して淡々と先輩がプレゼンを始めたのだった。

そして、その説明が終わるとバイヤーはうなずいて「よし、分かった」と一言だけ。先輩が「ありがとうございます!」とすかさず返事し、わずか数分で商談は終了したのだった。

あまりにあっさり終わるので、何が起きたのかと私が驚愕しているところに先輩は「よかった! 決まった! よし、この後は、お祝いに僕が行きつけのメイド喫茶に行こう!」と言うではないか(「えっ、メイド喫茶?」と思ったのはさておき......)。

状況がうまくのみ込めなかったため、商談会場を出た後に「これで商品の導入数や店舗、棚の配置、価格などは、全て決まったのですか? 契約書には何もサインしないのですか?」と尋ねると、先輩は涼しい顔で「決まったよ」とだけ答えるのだった。

あれはいったいどういうことだったのだろうか。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏に近い米上院議員が訪中、何副首相と会談

ワールド

ゼレンスキー氏、東部で司令官と会談 前線状況や米と

ワールド

ハマス、ガザ南部で政治指導者死亡と発表 イスラエル

ワールド

英ヒースロー空港再開、停電への対応調査へ 航空便の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平
特集:2025年の大谷翔平
2025年3月25日号(3/18発売)

連覇を目指し、初の東京ドーム開幕戦に臨むドジャース。「二刀流」復帰の大谷とチームをアメリカはこうみる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 2
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔平が見せた「神対応」とは? 関係者に小声で確認していたのは...
  • 3
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放すオーナーが過去最高ペースで増加中
  • 4
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 5
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 6
    止まらぬ牛肉高騰、全米で記録的水準に接近中...今後…
  • 7
    コレステロールが老化を遅らせていた...スーパーエイ…
  • 8
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 9
    ロシア軍高官の車を、ウクライナ自爆ドローンが急襲.…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャース・ロバーツ監督が大絶賛、西麻布の焼肉店はどんな店?
  • 4
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 5
    失墜テスラにダブルパンチ...販売不振に続く「保険料…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 7
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 8
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「気づいたら仰向けに倒れてた...」これが音響兵器「…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 10
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story