コラム

コロナ危機を日本が生まれ変わるきっかけに

2020年05月04日(月)11時20分
西村カリン(ジャーナリスト)

でも、私は暗い面ばかりを指摘するつもりはない。つらい時期にこそ新しい発想が生まれる。今回のショックで、日本社会でも現状を変える目標が出てくるのではないか。長期間の外出禁止を経験した人々は、考え方が大きく変わるはずだ。今まで何を重視していたかを振り返り、これからの日々で何を重視するかを考えるだろう。

隣の家に住む人は大丈夫かと心配し、お互いを「お手伝い」する活動が世界のあちこちで生まれた。フランスでは、今まで「不良の若者」と言われたパリ郊外の少年たちが、お年寄りのために買い物をして配達する動きもあった。

国境を超えた「都市封鎖のアート」も生まれるのではないか。最も知られているのはズーム(Zoom)などテレビ会議アプリを使った音楽ライブ。コロナ危機の前には誰も想像しなかったが、感動的なライブがいくつも行われている。そして、外に出ることができなくても「窓」がある。窓を開けて医療従事者を応援する活動も素敵だし、フランスでは窓の重要性をテーマにした絵や写真のコンテストが実施中だ。

フランス政府は文化の重要性を認識し、早い段階でアーティストを守る措置を取った。その点、日本政府は腰が重い。日本俳優連合や日本音楽家ユニオンが政府に支援を求めて声を上げたことを心から支持しよう。寂しいときには音楽、小説、映画やアートが私たちを支えてくれる。

magTokyoEye_Nishimura.jpg西村カリン
KARYN NISHIMURA
1970年フランス生まれ。パリ第8大学で学び、ラジオ局などを経て1997年に来日。AFP通信東京特派員となり、現在はフリージャーナリストとして活動。著書に『不便でも気にしないフランス人、便利なのに不安な日本人』など。

<本誌2020年5月5・12日合併号掲載>

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2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。

プロフィール

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・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
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・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
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・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

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