最新記事
アメリカ

ロサンゼルスのギャング抗争は、警察側も非道なプロファイリング、銃撃・投獄を行っていた

2024年7月4日(木)18時45分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
ロサンゼルス市警はギャングの取り締まりに力を入れてきた

ロサンゼルス市警はギャングの取り締まりに力を入れてきたが… Jack Quillin-shutterstock

<暴力犯罪が多発する「ギャングの首都」では、警察もたびたび非難を受けていた。そして犯罪はオンラインへ。20世紀初頭から始まる、ロサンゼルスのストリート・ギャングによる犯罪の歴史を紐解く(その3)>

ロサンゼルス市の犯罪統計によると、殺人、重暴行、レイプなどギャングによる暴力犯罪が、控えめに言っても毎年5000件以上起きているという。
『世界は「見えない境界線」でできている』
社会に対する不満、人種や民族的な差別は今も根強く残り、改善どころかますます実態の見えない活動へと広がり続けている。

地域住民を脅かすストリート・ギャングは流動的にかたちを変えながら、その領域を拡大し、行動を制限していく。地図には載っていない彼らの活動とは何か。

『世界は「見えない境界線」でできている』(マキシム・サムソン著、かんき出版)から、「ロサンゼルスのストリート・ギャング」の項を抜粋し、3回に分けて紹介する。

本記事は第3回。

※第1回:観光客向け「ギャングツアー」まであるロサンゼルス...地図に載らない危険な境界線はどこか
※第2回:クリップスとブラッズ、白人至上主義、ヒスパニック系...日本人が知らないギャング犯罪史 より続く

◇ ◇ ◇

人種差別から政治思想まで...「スキンヘッド・ギャング」

ペッカーウッズと人種差別主義のスキンヘッド・ギャング(一部のグループはほかに、エクストリーム・スポーツ〔訳注 断崖や雪山などの厳しい環境下で行い、危険度や技術を競うスポーツ〕のプレイヤーも受け入れている)は、次第に南カリフォルニアの各地域で区別がつかなくなりつつある。

そうは言っても、人種差別主義のスキンヘッド集団の大半は、いかにもストリート・ギャングらしい縄張りへのこだわりと、極右の政治思想を合わせ持っており、別個のカテゴリーに分類されることが多い。

もちろん、政治思想はスキンヘッド集団に付きものというわけではない。1960年代のロンドンに起源のあるこの集団は多種多様で、必ずしも人種差別主義者とは限らなかった。

ところが1970年代後半に、西欧各国が国内に移民に対抗する極右の民族主義者を抱えこむようになると、ほどなく米国でもネオナチのイデオロギーとシンボルに触発された人種差別主義のスキンヘッド組織(その一部はさらに、自らの目的のためにキリスト教や異教の図像を取り入れている)が台頭した。

現在、人種差別主義スキンヘッドのギャング、あるいは「仲間(クルー) 」の大部分は比較的小規模で、地方または地域単位で独立して活動することが多い。ギャングには大変めずらしく、目的は金ではなく、マイノリティのコミュニティや組織を脅すのを好む傾向があり、その方法は器物破損(ユダヤ系コミュニティの建物に鉤十字を描くなど)や暴力(スチール製のつま先のブーツで蹴ったり踏みつけたりする「ブート・パーティ」は、彼らの代名詞になった)だ。

その結果、いまロサンゼルス大都市圏の特定の郊外地域で、地元住民の最大の脅威になっているのは、ライヒ・スキンズのような人種差別主義を標榜するスキンヘッド・ギャングである。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

SHEINのロンドン上場、英国が認可 中国の承認待

ビジネス

午後3時のドルは一時142円台、半年ぶり安値 米関

ワールド

米特使がモスクワ訪問、プーチン氏と会談へ=アクシオ

ビジネス

アングル:鯨幕相場に潜む「もう1頭のクジラ」、国内
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 3
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が見せた「全力のよろこび」に反響
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 10
    右にも左にもロシア機...米ステルス戦闘機コックピッ…
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 7
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 8
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が…
  • 9
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 10
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中