アングル:鯨幕相場に潜む「もう1頭のクジラ」、国内勢の日本株買いに思惑

4月11日、トランプ関税の先行きが読み切れず、日本株の乱高下がとまらない。写真は都内で9日撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)
Noriyuki Hirata
[東京 11日 ロイター] - トランプ関税の先行きが読み切れず、日本株の乱高下がとまらない。日経平均は週初の急落後、値幅を伴いながら上下に大きな振幅を繰り返す「鯨幕相場」の様相だ。不透明感の解消が進みにくい一方、需給面では相場全体に大きな影響を与える「クジラ」といわれる投資家の存在が意識されている。
みずほ証券の中村克彦マーケットストラテジストは「鯨幕の裏側に、もう1頭のクジラが潜んでいる」と指摘する。チャート上では7日以降、ローソク足の陽線と陰線が交互に入れ替わっている。鯨幕は、相場の方向感が乏しくなっている局面で出現しやすい。
しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンド・マネージャーは「トランプ氏の朝令暮改が続いており、短期資金の先物主導で相場が振れやすくなっている」と話す。物色傾向もディフェンシブ株と景気敏感株が目まぐるしく入れ替わっており「業種別のチャートでも鯨幕がみられ、方向感の出にくさが示されている」(しんきんAMの藤原氏)という。
明確な方向感が出にくい状況にある中、もう1頭のクジラの需給動向に関心が寄せられている。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)だ。
東証が集計する投資部門別売買動向では、年度末の3月末にかけて年金勢の取引を映すとされる信託銀行の現物の売り越しが続いた。リバランスの売りが出たとみられている。
年金基金は分散投資の観点から、国内外株式や内外債券などの基本ポートフォリオに基づいて資産運用している。価格変動によって各資産の比率が許容範囲を超えた場合は、リバランスを通じて調整を行う。
年度末にかけては、国内金利が上昇(債券価格は下落)局面にあり、長期金利は一時1.6%近くに高まった。保有資産の比率の観点から相対的に株式の比率が高まったことで、リバランスでは株売りになったとみられている。
<クジラは援軍になるか>
「次のリバランスでは、債券売りの株買いになるのではないか」と、みずほの中村氏はみている。長期金利が足元で1.3%台と3月後半に比べ低下(債券価格は上昇)している一方、株価は3月末の3万6000円付近から3000円近く安い水準にある。
国内勢の需給の面では、4月は自社株買いの少ない期間にあたり、下支えが薄いとみられていた。ところが、株価の下げ基調が強まってきていた4月第1週には現物で3100億円の買い越しとなり、3月1カ月の3300億円の買い越しに迫った。フィリップ証券の増沢丈彦・株式部トレーディング・ヘッドは「下落局面では企業の自社株買いが入ることが、改めて確認された」と指摘する。
下値での自社株買いに、年金によるリバランス買いの援軍が加われば「日本株の下支えになってくるのではないか」と、しんきんAMの藤原氏は話している。
(平田紀之 編集:橋本浩)