有事にもろい台湾ネット環境 衛星回線の容量は海底ケーブルのわずか0.02%
2月に台湾本島と結ぶ海底ケーブル2本が切れて島民1万4000人がインターネットに接続できなくなった馬祖島・南竿地区(2021年1月撮影 ロイター/Ann Wang)
台湾が、中国に侵攻された場合に外界と通信できる手段を確保しようと奔走している。ロイターが複数の専門家や当局者に取材したところ、重要な海底ケーブルの復旧は平時でさえ迅速に進まないことや、バックアップの通信衛星網も整備されていないという厳しい現実が浮かび上がってきた。
中国は台湾への武力侵攻を一貫して排除せず、近年は軍事的にも政治的にも台湾への圧力を一段と強めつつある。
そこにウクライナの戦争が起き、台湾では安全保障強化の切迫感があらためて強まった。特に、中国によるサイバー攻撃、あるいは世界とのインターネット通信を支える14本の海底ケーブル切断への備えだ。
台湾国防部直属のシンクタンク、台湾国防安全研究院(INDSR)のアナリスト、ツェン・イスオ氏は、特にウクライナ戦争が始まって以降は、内外との戦略的通信に関する問題を考えると夜も眠れなくなると明かした。
解決策の1つとして当局が想定するのが低軌道衛星で、既に外国の衛星通信サービス企業を活用してインターネットサービスを拡充する2年間の試験プログラムを始動させている。
ドメイン管理を手がける台湾網路資訊中心(TWNIC)のケニー・フアン最高責任者によると、問題は台湾が使う衛星通信の回線総容量が海底ケーブルのわずか0.02%程度しかないこと。フアン氏によると、台湾では外資の持ち分を49%までに制限する厳しい規制が存在する一方、これといった優遇措置はないので、外国の衛星通信サービス企業に投資意欲を持ってもらうのに苦労しているという。
同氏は「外国企業向けの優遇措置はほとんど見当たらない。規制も変えなければならない」と述べた。
ウクライナはロシアに侵攻された後、実業家イーロン・マスク氏が率いるスペースXの衛星通信サービス「スターリンク」を各種通信に積極利用している。ただ台湾の国防専門家は、中国事業を抱える民間企業に依存する危険性を心配する。
INDSRのツェン氏は、マスク氏の米電気自動車(EV)メーカー、テスラが中国で車を販売している点に触れて「(台湾よりも)中国市場の方をマスク氏が気にかけるかどうかは分からない。(しかし)われわれは1社だけに運命を託すことはしない」と語った。