有事にもろい台湾ネット環境 衛星回線の容量は海底ケーブルのわずか0.02%
台湾政府高官ほか、別の関係者1人によると、総統を含む司令部が戦時に利用する通信チャンネルの強じん性を高める取り組みも進んでいる。
安全保障政策に携わる高官は、ウクライナのゼレンスキー大統領がソーシャルメディアで強力な存在感を示している事例を挙げて「われわれはゼレンスキー氏(の行動)を参考にしている」と述べた。
台湾数位発展部(デジタル発展省)は声明で、沖合の島々で衛星通信の試験プログラムを優先的に実行するとともに、年末までに周辺諸島でマイクロ波通信の帯域を拡大する方針を明らかにした。
海底ケーブルのもろさが露呈
台湾の通信インフラの脆弱さを露わにしたのが、今年2月に台湾本島と馬祖島を結ぶ海底ケーブル2本が切れて、島民1万4000人がインターネットに接続できなくなった事案だ。
当局がこれまでに調査したところでは、中国の漁船と貨物船が切断したもようだが、中国政府の関与があったという証拠は見当たらなかった。
電気通信事業最大手、中華電信は台北の山の上から馬祖島にマイクロ波を送る予備の通信システムに切り替えたものの、ケーブルが提供していた容量のおよそ5%しか復旧できなかった。今月に入って政府がこのシステムを拡充し、インターネットの通信速度は格段に向上したものの、台湾にはケーブル修復船が乏しいため、住民のネット接続が完全復旧するのは4月終盤以降になるという。
安全保障問題に詳しい台湾政府高官の1人は、海底ケーブルのもろさはずっと前から安全保障上の懸念要素で、これまで根本的な解決策が打ち出されなかったのは本当に愚かだと憤り、「独力で海底ケーブルの修理もできない」と自嘲した。
与党民進党の馬祖島支部長を務めるリー・ウェン氏は、このケーブル切断は台湾全土に対する「警報」になったと指摘。「もし世界とつながっている14本のケーブル全てが破壊されたらどうなるだろうか。われわれは適切な準備ができているか」と問いかけた。
台北のシンクタンク、国策研究院で軍事分野の研究をしているチエ・チュン氏は「緊急時には人々は情報を欲しがる。それが手に入らないと、パニックが広がっていく」と話す。
TWNICのフアン氏は、ケーブルが切断されて起きる軍事的な影響は、情報の遮断とパニックにとどまらないと指摘。ケーブルを切断された場合、台湾側は中国が全面攻撃の正当化に使えないような対応を適格に実行することが難しいかもしれないと予想する。
このためフアン氏は、中国が全面的な侵攻の手始めに海底ケーブルを切ってしまうのはほぼ間違いないと予想した。
(Sarah Wu記者、Yimou Lee記者)